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レディ・ガヴァネスに捧げるネックレス
このペンダントを、ヴィクトリア女王のガヴァネスであった、
ルイーゼ・レーツェンに捧げます。
彼女は1824年から1842年まで18年間、
ヴィクトリアのガヴァネスであり、よき相談相手でした。
Punctuallyのジュエリーは、
すべて古い本物の時計のパーツや歯車を使って作られており、
それを身に着けた人は、
時空を超えて、
様々な世界に、旅をすることが出来るのです。
それでは、“時の歯車”の力を借りて、
彼女がヴィクトリアのガヴァネスとなった1824年に、旅をしてみましょう。
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ルイーゼ・レーツェンは1784年、ハノーヴァーの牧師の家に生まれた。
ルイーゼには6人の姉妹と2人の兄弟があり、
全部で9人の子供を持つ両親は貧しく、生活は苦しかった。
彼女は幼いころから家事を手伝い、その傍らに本を読んだり勉強をした。
彼女は独学で、
母国語のドイツ語の他に英語、フランス語、ラテン語をマスターした。
9人の兄弟の中で彼女は一番のしっかり者で、勉強も良くできた。
父は優しい牧師で、いつも家族や町の人々のことを考えていた。
生活は貧しかったが、明るい父と温和な母、
そしてたくさんの兄弟に囲まれた暖かい家庭で、彼女は育った。
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レーツェンが35歳になった1819年、
ケント公爵エドワードと、ヴィクトリア公妃の住むケンジントン宮殿へと
移り住んだ。
それから5年後の1824年、
彼女はケント公の、5歳になる娘のガヴァネスとして迎え入れられた。
その娘こそが、後のヴィクトリア女王アレクサンドリナ・ヴィクトリアであった。
ガヴァネスとは、
個人の家庭内で子供たちを教育し、訓練するために雇われる女性のことで、
今でいう女家庭教師のような存在。
ナニーやベビーシッターとは異なり、
子供たちの身の回りの世話をするのではなく、専ら教育に従事する。
ガヴァネスは児童に「3つのR」(reading、writing、arithmetic)
つまり日本で言う「読み・書き・算盤」を教えた。
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レーツェンが初めてヴィクトリアを見たとき、
彼女は(この子は、なんてさみしそうな瞳をしているのだろう。)と、思った。
母親の陰に身を隠して、恐る恐る顔をのぞかせるヴィクトリア・・・
(なんて、おどおどしているのかしら?この子が本当に女王になれるのだろうか・・・)
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その時から、レーツェンとヴィクトリアの長い信頼関係ははじまった。
レーツェンは、
ときには厳しく、ときには優しく、ヴィクトリアに接した。
ある朝、ヴィクトリアは今にも泣きそうな顔でレーツェンにこう告げた。
「お母様は、私のことをお好きではないのね。
私のマナーが悪いとおっしゃって、お話しもしてくださらないの。」
唇をかみしめながら、
必死で泣くことをこらえているヴィクトリアを、
レーツェンは思わず抱きしめていた。
そして、
「ヴィクトリア、あなたは一生懸命、努力していらっしゃいますよ。
お母様もわかっていらっしゃる。心配ないですよ。
これからは、私がずっとあなたのお側で、お勉強もマナーもちゃんと教えて差し上げます。あなたが素敵なレディになれるよう。」
ヴィクトリアはレーツェンにしがみついて、泣いた。
彼女が母以外の人の前で泣いたのも、
誰かに抱きしめてもらったのも、
この時がはじめてだったという。
レーツェンは、少しづつヴィクトリアに自信を与えていった。
自分のことを心から思ってくれる人が側にいることを知って、
ヴィクトリアの心は落ち着き、
次第に、自分が高貴な立場の人間であることも自覚してきたという。
6歳のころ、臣民の子供が自分の身分をわきまえず、
ヴィクトリアのおもちゃに触ろうとした。
レーツェンが止める前に、ヴィクトリア自身がその子をたしなめた。
わずか6歳にして、すっかり風格をたずさえたヴィクトリアを
レーツェンは頼もしいと思った。
ただ、彼女の瞳は、あいあかわらずどこかさみしそうだと思っていた。
それは、幼くして父を亡くし、
たった一人の肉親である母親の愛情に不審感をいだいている、
孤独な彼女の心を映しているかのようだった。
レーツェンは、
(彼女を守ろう。私のすべてをかけて。自分の子供のように愛してあげたい・・・)本気でそう思っていた。
しかし、そんな彼女の思いに反して、
ガヴァネスという彼女の立場は微妙なものであった。
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ガヴァネスは、成人男性の海外移住や晩婚化が進み、
大量の未婚女性が生まれてきた時代の職業である。
この時代、社会的に女性が職業をもつのははしたないとされ、
家庭においてもガヴァネスは使用人でもなく家族の一員でもない。
<余った女>とも揶揄された。
このどっちつかずの社会的地位の現れとして、
彼女らはしばしば一人で食事をした。
ガヴァネスは教育を受けていたが、
給金を受ける身であり、決して家族の一員ではなかった。
当時の社会においては、ガヴァネスは、
結婚していない中流の女性が自立するための数少ない方法の1つであった。
レーツェンがいくらヴィクトリアを愛しく思い、
母親のような気持ちを抱こうと、
必死で愛情を注ごうと、
決して彼女が家族の一員として認められることは無かった。
フォークを手にしてヴィクトリアにマナーを教えたくても、
一緒の席で食事をとることは許されず、いつも一人さみしく食事をした。
レーツェンは自分が、
メイドや他の使用人とは違うこと、
ヴィクトリアの最も近い位置にいること、
知識と教養に溢れた教育者であること、などを自覚しながらも、
お給料をもらう雇われの身であること、
決して家族にはなれないこと、
などから
自分の立場が中途半端であると感じていた。
社会的にも、お給料をもらっていても労働者ではなく、
結婚してマダムと呼ばれているわけでもない。
どこにも属することがなく、
身の置き所のない居心地の悪さと、いつも心のどこかに不安を抱えていた・・・
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ヴィクトリアが11歳になったとき、
初めて、彼女が次の王位継承者であることを知らされた。
それを知ったヴィクトリアは、
(私は、母や国民の期待に応えられる女王になれるのだろうか・・・)
そんな不安を母には打ち明けられず、
ある日、
そっとレーツェンに打ち明けた。
レーツェンは、ヴィクトリアを宮殿の中の祈りの部屋に連れて行った。
そして、こう話した。
「私の父は小さな村の牧師でした。
今でも父が毎日曜日に、お説教で語っていた言葉を思い出します。
<私達が神に召されるとき、地位も名誉もお金も家も、何も持ってゆくことはできません。ただ一つもってゆけるのは、周りの人を幸せにして、自分も幸せであったという想い出だけなのです。>
父は貧しく、地位も名誉もありませんでした。
でも、父の優しかった想い出は、今も私の心の中で生きています。
ヴィクトリア、
私があなたに、どれだけのことをしてさしあげられるかはわかりませんが、
私は私の全身全霊をかけて、あなたが幸せになれるようできる限りのことをさせていただきます。」
それを聞いたヴィクトリアは、まっすぐな眼差しでレーツェンを見つめて、
「ありがとう、レーツェン。私も、国民が幸せになれるよう良い人になりたい。」そう言って、涙を流した。
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さて、そろそろ、ネックレスを外して、旅を終えよう。
このPunctuallyの“時の歯車”のネックレスを着けることで、
その時代に旅をするだけではなく、
その時代のその人物の気持ちも味わうことができる。
レーツェンはいつも思っていた。
(私は、労働者でも、妻でも、母でもない。
社会のどこにも属していないし、家族としても認められていない・・・。
なんて中途半端な存在なのだろう。
でも、地位や名誉や立場など関係なく、ヴィクトリアが愛おしい、
そして、ヴィクトリアが幸せになるためならばできる限りのことをしてあげたい。彼女を喜ばせることで、私も幸せになり、孤独な気持ちが癒される。)
このネックレスを、貴重な時間を労働に従事した、
「レディ」志向と階級意識の強い英国女性の「レディ・カヴァネス」に捧げる。
組み合わせたのは、タイガーズアイ。
広い視野と洞察力、判断力、集中力を高め、物事を成功へと導く石。
直感力や決断力を高め、仕事を成功に導き、学習や技術の習得にも最適な石。
まさしくカヴァネスが必要としていた石であろう・・・
@この物語は、実在する人物、時代背景をもとに書かれた架空の物語です。