
大福を食べて集団食中毒(混合感染?)
釧路新聞は「中標津保健所は29日、町内の菓子製造業者が製造、販売した大福を食べた36人が下痢や嘔吐、」と報じました。
この記事は【会員限定】だったため内容が分かりませんでしたが、北海道庁のホームページを調べたところ、黄色ブドウ球菌とセレウス菌が検出されたということです。
このことで思い出すのは、平成13年12月に熊本市で発生したあん餅の事例です。この事例では、ブドウ球菌とセレウス菌が検出されましたが、最終的にセレウス菌の嘔吐型毒素が検出されたためセレウス菌食中毒とされました。
ところで、大福は粉にしたもち米に水と砂糖を加え加熱して練り上げた求肥で餡を包んだものです。
大福もあん餅も手指で触れると 、同じように黄色ブドウ球菌による食中毒の可能性があります。しかし、あん餅は主に冬場に作られる関係からか食中毒事例は少ないです。
今回の事件で言いたかったのは、食中毒の原因菌である「黄色ブドウ球菌」と「セレウス菌」は相性が良いということです。
ともに食品中で熱に強い毒素を産生します。
厚労省の食中毒統計を調べたところ、平成8年以降、5事例について、黄色ブドウ球菌とセレウス菌の両方が検出されたという記載がありました。ただし、片方が原因菌とはならなかった事例も含む可能性があると思います。
食中毒を起こす菌は、例えば「加熱によって他の菌が死滅したところへ、原因となった菌のみが付着し、競合することがないため大量に増殖した。」などと説明されることが良くあります。
このことは、「腐敗菌が増えていなかったため食中毒菌が増えていることに気づかず食べてしまった。」といったことに結びつきます。
ブドウ球菌とセレウス菌については、共存するとより増殖できるのかどうかと調べられたこともあったようですが、そういうことはなかったようです。
補足ですが、食中毒発生の要因としてセレウス菌は器具由来。黄色ブドウ球菌は手指を介した汚染というのが私の見立てです。
ところで、中標津の事件はどちらが主犯だったのでしょうね。
◇ 大福食べて集団食中毒(釧路新聞 2021/09/30)
◇ 中標津保健所管内における食中毒の発生について(令和3年9月29日公表)- 健康安全局食品衛生課
◇ セレウス菌による食中毒について(横浜市健康福祉局衛生研究所感染症・疫学情報課 2002年1月15日)