ノロウイルス食中毒が多発! トイレからウイルスを持ち帰らないで
ノロウイルス食中毒はトイレから始まります
年明けから老人施設や居酒屋でのノロウイルス食中毒発生のニュースが報道されています。
ノロウイルスによる胃腸炎では、主な症状は吐き気、おう吐、下痢、発熱、腹痛であり、小児ではおう吐、成人では下痢が多いです。有症期間は平均24~48時間といわれます。
ノロウイルスは胃腸炎症状を起こすことからも分かるように、胃や腸の細胞中で増え、おう吐物や糞便とともに環境中へでてきます。
ノロウイルスで汚染された食品類(ノロウイルスを10個~100個以上含むもの)を食べた後、平均36時間前後すると、おう吐や腹痛、下痢の症状が出ます。
でも、ノロウイルスに汚染されているからと言って、食品自体には何の変化もありません。そのわけは、患者便の1gあたり10億個という大量のウイルスがいることがあります。ヒトがノロウイルスに感染するにはウイルスが10個~100個必要といわれています。これをウンチの量で表すと、1千万分の1gで足りることになりそうです。
1千万分の1gという量は、目では見えず、匂いも分からないですよね。
だから、ノロウイルスで汚染された手が触れた食品で食中毒がおきたりするのですね。ノロウイルスは一般の食中毒菌と違い、食品中では増えません。
給食弁当による集団食中毒の事例
お弁当で100人を超えるノロウイルスによる食中毒というのはどのような時に起こるのでしょうか。このような疑問を持ち、過去の事例を調べてみると、2018年に患者数500名を超えた事例がありました。
この事例では、原因となった食品は特定できなかったものの、調理従事者やトイレ周りからノロウイルスが検出されていました。
トイレのノロウイルス汚染
ノロウイルス食中毒にかかったことのある人の体験談では、次のように悲惨なことになることが有るようです。
「学校の体育の授業中に発症し、トイレに間に合わず腹痛と同時に真っ先にパンツも体操着も汚してしまい、からかわれましたが、その後は同じクラスや他のクラスでも同じ状態に陥り、トイレも教室も廊下もパニック状態でした。」
トイレ掃除の難しさ
食中毒の原因施設のトイレの状況は、保健所の調査によると次のようでした。
▽ トイレは洋式便座の個室で,製造施設外に隣接して男性用及び女性用に分けられていた。
▽ トイレの清掃は従事者が当番制で終業時に行い,便器内を洗剤で洗浄した後に.20Oppm以上の次亜塩素酸ナトリウムを含ませた布を用いて,タンク,便器及び床を清拭していた.
▽ トイレを使用するときは,上衣及び帽子を脱ぎ,靴を履きかえていたが,ズボンは脱いでいなかった。
▽ トイレを使用した後の手洗いは,石鹸液による洗浄後に微酸性水で消毒していた.
▽ 使用者に制限はなく,従事者以外の事務員及び外部の仕入れ業者も使用できる状態であった。
以上のとおりで、掃除の順番が手洗い設備などの衛生的な場所から最も汚染されている便器に向かって掃除することが確認されていない他は、特に問題が有るようには思いません。
事件当時、一体何がおこったのでしょうか。
ノロウイルスに罹った従事者の方が下着もズボンも汚してしまい、懸命に取り繕って仕事に復帰したための事故という可能性はなかったのでしょうか。
2022年/23年 シーズンのノロウイルス
2021年はコロナ対策の副次効果か、ノロウイルスによる食中毒が激減しましたが、2022年秋になると行動制限の撤廃などとともに、各地でノロウイルスが原因と思われる感染性胃腸炎や食中毒が多発するようになりました。
これにあわせ、2022年11月10日の滋賀県を皮切りに、岡山県、岐阜県、長野県、栃木県などで「ノロウイルス食中毒注意報や警戒情報」が発表されています。
ノロウイルス食中毒は現時点でも各地で発生しており、この1月21日にも給食センターで調理・配達された弁当を食べた介護施設の利用者や保育園児ら142人のノロウイルス食中毒が報じられていました。
くれぐれも、ノロウイルスをトイレから持ち帰らないようにしましょう。
--- 資料 ---
◇ ノロウイルスによる食中毒の現状と対策について(国立医薬品食品衛生研究所)
◇ 介護施設の利用者や保育園児ら142人食中毒…ノロウイルス検出、弁当会社を営業停止に(讀賣新聞 2023/01/21 13:21) コメント欄
◇ 鮮魚店を3日間の営業停止に 仕出し弁当で食中毒 東根市(NHK 山形NEWS WEB 2023/01/12)
◇ 給食弁当で86事業所、436名のノロウイルス食中毒/広島(今日の疑問 2018/12/20)
◇ トイレを起点とするノロウイルス汚染拡大の検証(長野県北信保健福祉事務所)