関税率表 第58.10項
第 58 類 特殊織物、タフテッド織物類、レース、つづれ織物、トリミング及びししゅう布
58.10 ししゅう布(モチーフを含む。)
5810.10-ししゅう布(基布が見えないものに限る。)
-その他のししゅう布
5810.91--綿製のもの
5810.92--人造繊維製のもの
5810.99--その他の紡織用繊維製のもの
ししゅう布は、チュール、網地、ベルベット、リボン、メリヤス編物、クロセ編物、レース、織物、フェルト及び不織布の先在する基布に装飾的な効果を現すためししゅう糸でししゅう加工することによって得られるものである。ししゅう糸は、通常、紡織用繊維であるが、他の材料(例えば、金属、ガラス又はラフィア)で、ししゅう加工されたものもこの項に含む。基布は、通常完成したししゅう布の一部を形成するが、ある場合には、ししゅうした後に(例えば、化学的に又は裁断により)デザインのみを残して除去される。またある種のししゅう布は、ししゅう糸ではなくストリップ又は組ひもで作られるものもある。
このため、ししゅう布はその製造が、先在する基布から出発することでレースと区別されるが、ししゅうした後で基布を除去されたししゅう布は、レースと混同しやすいので注意しなければならない。また、製織工程の間にブロシェ糸によって作られたデザイン(plumetis その他のブロシェ加工)を有する織物もししゅう布と混同しやすいので注意しなければならない。
ししゅう布をこれらその他の物品から区別する特徴については、この解説書の所定の場所で触れることにする。
ししゅう布は手製又は機械製である。手製のものは比較的小さい寸法のものであるが、機械製のものは、手製のものよりしばしば非常に長いものがある。
この項に属するししゅう布には、主として次の三つのグループがある。
(Ⅰ)基布を有しないししゅう布
これは基布を取り除かれたししゅう布であり(例えば、化学的処理又は切り離すことにより)そのためししゅうされたデザインのみから成り立っている。
このタイプのある種の機械製ししゅう布は、基布を有してないために 58.04 項のレースと混同しやすいが、次の点を考慮することにより区別することができる。
(A)レースは、1本の連続した糸又は同じ機能を有する2本以上の連続した糸を絡み合わせることによって作られるもので、一般にその外観は表も裏も同じである。これに対しこの種の機械製のししゅう布は、それぞれ異なる動きをする2本の糸で構成され、一方の糸はししゅう糸となり、他方の糸はシャトル糸となり、通常、前者のししゅう糸より細いものが使われて基布の下でししゅう糸を固定している。そのため、ししゅう布の表面と裏面は異なった外観を有し、裏面は平らであるのに表面は、いくぶん浮き上がって見える。
(B)基布を切り離されたししゅう布には、しばしば、完全に除去されなかった基布の糸の端末が見られる。
(Ⅱ)ししゅう後も基布を有するししゅう布
このししゅう布では、ししゅう糸が、通常、基布全体を覆い隠すことなく、その表面又はまわりの縁に柄を形成している。そのししゅうの方法には色々あり、ランニングステッチ、チェーンステッチ、バックステッチ、ロックステッチ、ヘリン・ボーンステッチ、ポワンドゥポストウ(ブリオンステッチ、point de poste)、シードステッチ、ループステッチ、ボタンホールステッチがある。一般的に完全なデザインは、基布の表面にのみ見ることができる。ししゅう布の多くのものには、小穴又は透かし(基布をカットし、目打ちで穴あけし又は基布からたて糸若しくはよこ糸(時にはその両者)を引き抜きし、その後、ししゅうかがりで仕上げ又は飾ることによって得られる。)がある。これはししゅう布に優美さを加えたり、主要な魅力のもととなることさえある。
例えば、イギリスししゅう(broderie anglaise)及び糸抜き加工がある。
単に糸抜き加工のみをしたものは、この項に含まない。
ししゅう布のある種のものには、大きな浮き模様のししゅうを得るため、最初に詰糸(padding thread)で希望するデザインの輪郭を描いたり又は埋めて行くものがある。
機械製ししゅう布のある種のもの、特にサテンかがりししゅう及びししゅうモスリンは、50 類から 55 類までに属するいわゆるブロッシェモスリンその他のブロッシェ織物に非常に良く似た外観を有している。
しかしこれらについては、その製造方法から生ずる次のような特徴で識別することができる。
すなわち、ブロッシェ織物のデザインは、その製織工程中において、ブロッシェ糸を挿入することにより作られるもので、デザインを形成する糸のすべてが、基布のよこ糸又はたて糸の間に正確にそれらと平行に並べられるものである。ところが、ししゅう布は、先在する基布の表面にデザインを作るもので、デザインを得るためには、基布をししゅう機械の上に広げて張って、ししゅうしなければならず、このため、基布の張力及び位置は、機械の針で作業するには完ぺきとは言い難く、基布のたて糸又はよこ糸の間で、ししゅうに対応する全ての部分に正確に機械針を一致させて挿入することはできない。更に、ししゅう布では、しばしば針が基布の糸を突き通すことがあるが、ブロッシェ織物では、このようなことは起こり得ないものである。
これらの特徴によるブロッシェ織物とししゅう布との区別は、デザインの端をほつれ上げることにより行うことができる。
(Ⅲ)アプリケ加工
これは紡織用繊維の織物又はフェルトの基布に、次に掲げるものをししゅう縫い又は通常、ステッチによって縫い付けたものである。
(A)ビーズ、小円板その他これらに類する装飾的アクセサリー:これらのアクセサリーは、通常、ガラス、ゼラチン、金属又は木で作り、基布に柄又はデザインを表すように縫い付けられる。
(B)紡織用繊維その他の材料の装飾的なモチーフ:これらのモチーフは、通常、基布と異なった組織の紡織用繊維の織物類(レースを含む。)を種々の柄に切り抜き、基布に縫い付けるものである。ある場合には、モチーフを取り付けた場所の基布を取り除くこともある。
(C)組ひも、シェニールヤーンその他のトリミング等:これらは、基布に取り付けられデザインを形成する。
上記に述べた全てのししゅう布は、次の形状のとき、この項に属する。
(1)種々の幅を有する反物状又はストリップ状のもの
これらの反物及びストリップには、同一のデザインを連続してししゅうしているものもあり、完成品を作るために事後分離されるようになっているかないかを問わない(例えば、衣類のマーク付けに使用するししゅうしたラベルのストリップ又は裁断することにより bibs(前かけ、よだれかけ等)が得られるよう一定間隔にししゅうをした反物)。
(2)モチーフ状のもの
例えば、衣類又は室内用品にししゅうの要素として結合又はアプリケする以外に何らの用途を有しないししゅうによりデザインを形成した個々の布片。これらには、各種の形状に裁断したもの、裏張りその他の方法で組み合わせたものがあり、バッジ、記章、flashes、イニシャル、標識、星、勲章等を含む。
この項には、次の物品を含まない。
(a)紡織用繊維以外の材料(例えば、皮革、枝条細工物、プラスチック、板紙)にししゅうしたもの
(b)ニードルワークしたタペストリー(58.05)
(c)ししゅうを施したテーブルクロス又はナプキンその他これらに類する製品を作るための織物と糸から成るセット(63.08)
(d)11 部総説(Ⅱ)に規定する「製品にしたもの」とみなされるモチーフ以外のししゅう布(完成したもので、そのままで、使用できるかできないかを問わない。)及びししゅう布の製品(完成したもので、そのまま使用でき、更に加工することなくその最終の形状で直接ししゅうしたもの)。この広範囲にわたる物品は、製品にしたものに属する(例えば 61 類、62 類、63 類又は 65 類)。例えば、ハンカチ、前かけ、カフス、カラー、ボデイス、ドレス、トレークロス、テーブルセンター、マントルピースカバー、テーブルマット及びカーテンを含む。
(e)ガラス繊維の糸でししゅうしたもので、基布を有しないもの(70.19)
号の解説
5810.10
この号には、イギリスししゅう(broderie anglaise)を含まない。
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