関税率表 第28.43項
第 28 類 無機化学品及び貴金属、希土類金属、放射性元素又は同位元素の無機又は有機の化合物
28.43 貴金属の無機又は有機の化合物(化学的に単一であるかないかを問わない。)、コロイド状貴金属及び貴金属のアマルガム
2843.10-コロイド状貴金属
-銀化合物
2843.21--硝酸銀
2843.29--その他のもの
2843.30-金化合物
2843.90-その他の化合物及びアマルガム
(A)コロイド状貴金属
この項には、71 類に掲げる貴金属(すなわち、銀、金、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム及びルテニウム)であって、コロイド状のものを含む。
これらのコロイド状貴金属は、分散又はカソード崩壊(cathodic pulverisation)及び貴金属無機塩類の還元によって得られる。
コロイド状銀は、金属光沢を持つ青色、かっ色又は緑色を帯びた灰色の小粒又はフレークで、防腐剤として医薬に使用する。
コロイド状金は、赤色、紫色、青色又は緑色で、コロイド状銀と同様な用途に使用する。
コロイド状白金は、灰色の微小な粒で、著しい触媒特性を持っている。
これらのコロイド状金属(例えば、金)は、保護コロイド(ゼラチン、カゼイン、魚膠等)を含有したコロイド溶液に調製してあってもこの項に含む。
(B)貴金属の無機又は有機の化合物(化学的に単一であるかないかを問わない。)
これらには、次の物品を含む。
(Ⅰ)貴金属の酸化物、過酸化物及び水酸化物:これらは、4節の化合物に類似している。
(Ⅱ)貴金属の無機塩:これらは、5節の化合物に類似している。
(Ⅲ)りん化物、炭化物、水素化物、窒化物、けい化物及びほう化物:これらは、28.49 項、28.50項及び 28.53 項の化合物に類似している(りん化白金、水素化パラジウム、窒化銀、けい化白金等)。
(Ⅳ)貴金属の有機化合物:これらは、29 類の化合物に類似している。
この項には、貴金属とその他の金属の両者を含んでいる化合物(例えば、卑金属と貴金属の複塩、貴金属を含む錯エステル)も含む。
主なものは、次の物品である。
(1)銀の化合物
(a)銀の酸化物:一酸化二銀(Ag2O)は、黒かっ色の粉末でわずかに水に溶ける。光により黒変する。
酸化銀(AgO)は、灰黒色の粉末である。
銀の酸化物は、電池の製造に使用する。
(b)銀のハロゲン化物:塩化銀(AgCl)は、白色の塊又は粉で水に不溶。光にさらすと黒ずむ。不透明に黒く着色した容器に貯える。写真、陶磁器の製造、医薬及び銀めっきに使用する。
この項には、角銀鉱(cerargyrites 又は hornsilver、天然の銀の塩化物及びよう化物)は含まない(26.16)。
臭化銀(黄色)、よう化銀(黄色)及びふっ化銀は、塩化銀と同様の用途に使用する。
(c)硫化銀:人造の硫化銀(Ag2S)は、重い灰黒色の粉末で水に不溶。ガラス製造に使用する。
この項には、天然の硫化銀(輝銀鉱、argentite)、天然の銀及びアンチモンの硫化物(濃紅銀鉱、pyrargyrite)、ぜい銀鉱(stephanite)、輝安銀鉱(polybasite)並びに天然の銀及び砒(ひ)素の硫化物(淡紅銀鉱、proustite)は含まない(26.16)。
(d)硝酸銀(AgNO3):白色の結晶で水に可溶、有毒、皮膚を侵す。ガラス又は金属の銀めっき、絹又は角の染色、写真、消えないインキの製造及び防腐剤又は駆虫剤に使用する。
また、「溶性硝酸銀(lunar caustic)」と呼ばれることもあるが、これは、硝酸銀を少量の硝酸ナトリウム又は硝酸カリウムと溶融したもの(時には少量の塩化銀を含む。)で、30 類の焼しゃく剤の製造に使用する。
(e)その他の塩及び無機化合物
硫酸銀(Ag3SO4):結晶である。
りん酸銀(Ag3PO4):黄色の結晶で水に多少溶ける。医薬、写真及び光学に使用する。
シアン化銀(AgCN):白色の粉で光にさらすと黒ずみ、水に不溶。医薬及び銀めっきに使用する。チオシアン化銀(AgSCN)は、シアン化銀に似た外観で、写真の増感剤に使用する。
銀とカリウムのシアノ錯塩(KAg(CN)2)及び銀とナトリウムのシアノ錯塩(NaAg(CN)2)は、水溶性の白色塩で、電気めっきに使用する。
雷酸銀は、白色の結晶で、わずかの衝撃で爆発し危険である。雷管の製造に使用する。
二クロム酸銀(Ag2Cr2O7):結晶性の赤色粉で水に難溶。顔料(銀赤、パープルレッド)に使用する。
過マンガン酸銀(Ag2MnO4):深紫色の結晶性の粉で水に可溶。ガスマスクに使用する。
アジ化銀は、爆薬となる。
(f)有機化合物:これには、次の物品が含まれる。
(ⅰ)乳酸銀(白色の粉)及びくえん酸銀(黄色を帯びた粉):写真及び防腐剤に使用する。
(ⅱ)しゅう酸銀は、加熱すると分解し、爆発する。
(ⅲ)酢酸銀、安息香酸銀、酪酸銀、けい皮酸銀、ピクリン酸銀、サリチル酸銀、酒石酸銀及び吉草酸銀
(ⅳ)銀のプロテイナート(proteinates)、ヌクレアート(nucleates)、ヌクレイナート(nucleinates)、アルブミナート(albuminates)、ペプトナート(peptonates)、ビテリナート(vitellinates)及びタンナート(tannnates)
(2)金の化合物
(a)酸化物:酸化第一金(aurous oxide)(Au2O)は、水に不溶性の暗紫色の粉である。酸化第二金(無水金酸、auric oxide)(Au2O3)は、かっ色の粉である。対応する酸は、水酸化第二金(auric chloride)又は金酸(Au(OH)3)と呼ばれる黒色の物質で光にさらすと分解する。また、金酸アルカリの原料となる。
(b)塩化物:塩化第一金(aurous chloride)(AuCl)は、黄色又は赤色を帯びた結晶性の粉である。塩化第二金(auric chloride、三塩化金又はかっ色塩化物)(AuCl3)は、赤かっ色の粉又は結晶性の塊で、吸湿性が強く密せんしたフラスコ又は管に貯える。四塩化金(Ⅲ)酸(AuCl3・HCl・4H2O)(黄色塩化物)は、黄色の結晶であり、水化物である。
クロロ金酸アルカリは、赤味を帯びた黄色の結晶であり、同様に本項に属する。これらの物品は、写真(toningbaths の調製)、窯業、ガラス工業及び医薬に使用する。
この項には、カシウス紫金(purple of cassius、水酸化すずと金コロイドの混合物)を含まない(32 類)。これはペイント又はワニス(特に磁器の着色)に使用する。
(c)その他の化合物:硫化金(Au2S3)は、黒色の物質で、硫化アルカリと作用させるとチオ金酸塩となる。
金とナトリウムの亜硫酸複塩(NaAu(SO3))及び金とアンモニウムの亜硫酸複塩(NH4Au(SO3))は、無色の溶液として市販されており、電気めっきに使用する。
チオ硫酸金ナトリウムは、医薬に使用する。
シアン化金(AuCN)は、黄色の結晶性粉で加熱すると分解する。電気金めっき、医薬に使用する。シアン化アルカリと反応してシアノ金酸塩となる。例えば、テトラシアノ金酸カリウム(KAu(CN)4)は、水溶性の白色の塩で電気めっきに使用する。
チオシアン酸金ナトリウムは、橙色の針状結晶で写真(toning baths)及び医薬に使用する。
(3)ルテニウムの化合物:二酸化ルテニウム(RuO2)は(青色の物質)であり、四酸化ルテニウム(RuO4)は、橙色の物質である。三塩化ルテニウム(RuCl3)及び四塩化ルテニウム(RuCl4)は、塩化アルカリとともに塩化物の複塩を形成し、また、アミノ錯塩やニトロソ錯塩も形成する。アルカリ金属及びルテニウムの亜硝酸複塩もある。
(4)ロジウムの化合物:水酸化ロジウム(Rh(OH)3)は、三酸化二ロジウム(Rh2O3)に相当する黒色の粉である。三塩化ロジウム(RhCl3)は、塩化アルカリと塩化ロジウム酸塩を生じる。
また、みょうばん又はりん酸塩を伴った硫酸塩、硝酸塩及び亜硝酸錯塩、シアノロジウム錯塩、アミノ錯塩又はしゅう酸誘導体が存在する。
(5)パラジウムの化合物:最も安定な酸化物は、酸化第一パラジウム(PdO)である。これは唯一塩基性の酸化物である。黒色の粉で、加熱すると分解する。
塩化第一パラジウム(palladous chloride)(PdCl2)は、かっ色の潮解性粉で水に可溶。
二水塩は結晶する。窯業、写真及び電気めっきに使用する。
塩化亜パラジウム酸カリウム(potassium chloropalladite)(K2PdCl4)は、かっ色の塩で、かなり水に溶け、一酸化炭素の検出に使用する。これもまたこの項に属する。
また、塩化パラジウム酸塩(chloropalladates)、アミノ化合物(パラジウムジアミン)、チオパラジウム酸塩(thiopalladates)、パラド亜硝酸塩(pallado-nitrites)、シアノパラジウム酸塩(cyanopalladites)、パラドしゅう酸塩(pallado-oxalates)、硫酸第一パラジウム(palladous sulphate)等が存在する。
(6)オスミウムの化合物:二酸化オスミウム(OsO2)は、暗かっ色の粉である。四酸化オスミウム(OsO4)は、揮発性の固体で、白色の針状の結晶であり、眼及び肺を侵す。
組織学及び顕微鏡研究に使用する。この四酸化物は、オスミウム酸カリウム(赤色結晶)のようなオスミウム酸塩を生成する。また、アンモニア及び水酸化アルカリで処理するとオスミウム酸カリウム又はオスミウム酸ナトリウム(黄色結晶)のようなオスミウム酸塩を生成する。
四塩化オスミウム(OsCl4)及び三塩化オスミウム(OsCl3)は、アルカリ性塩化オスミウム酸塩(chloro-osmates)及び塩化亜オスミウム酸塩(chloro-osmites)を生成する。
(7)イリジウムの化合物:酸化イリジウムのほかに、四水酸化イリジウム(Ir(OH)4)(青色の固体)、塩化イリジウム、塩化イリジウム酸塩(chloroiridates)、塩化亜イリジウム酸塩(chloroiridites)、硫酸複塩、アミノ化合物が存在する。
(8)白金の化合物
(a)酸化物:酸化第一白金(platinous oxide)(PtO)は、紫色又は黒色を帯びた粉である。
酸化第二白金(platinic oxide)(PtO2)は、種々の水化物(例えば、四水化物(H2Pt(OH)6)は、ヘキサヒドロキシ白金酸アルカリに対応する錯酸(complexacid)(へキサヒドロキシ白金酸)を生成する。また、これに対応するアミノ錯塩がある。
(b)その他の化合物:塩化第二白金(platinic chloride)(PtCl4)は、かっ色の粉又は黄色の溶液で試薬として使用する。商慣行上の塩化白金(塩化白金酸(chloroplatinicacid)(H2PtCl6))は、かっ赤色の潮解性のあるプリズム状で水に可溶。写真(白金、toning)、白金めっき、陶磁器のうわぐすり、海綿状白金の製造に使用する。
また、これに対応する白金アミノ錯塩が存在する。
なお、塩化亜白金酸(chloroplatinous acid)(H2PtCl4)(赤色の固体)に対応するアミノ錯塩も存在する。カリウム又はバリウムのシアノ亜白金酸塩(cyanoplatinites)は、ラジオグラフの蛍光スクリーン製造に使用する。
(C)貴金属のアマルガム
貴金属と水銀の合金である。最も一般的なものである金又は銀のアマルガムは、貴金属を得るための中間製品として使用する。
この項には、貴金属と卑金属の両方を含有するアマルガム(例えば、歯科用に使用するある種のアマルガム)を含む。ただし、全体が卑金属のアマルガムは含まない(28.53)。
水銀化合物(化学的に単一であるかないかを問わないものとし、アマルガムを除く。)を含まない (28.52)。
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