女という人#5「ふられるって、よくわからないし、ちょっと悲しい」
『男性よりも女性の方がはるかにたくさんのことを同時に考えて生きていると思う』
そのストレートなもの言いに、私は好感を持った。
もちろん彼女は「あくまでも私の偏見かもしれないけれど」という言葉を添えていたけれど、私はうんうん、そうだよね!と頷いた。
すごく自分の感覚を大切にしている人なのだろう。
彼女に会ったのは、私の個展会場だった。じっくりと作品1枚1枚を見る姿が印象的だった。さらっと見るわけでなく、きちんと感じ、きちんと自分の感覚の中に注入している感じ。
真面目そうな、きっちりした方っていう印象だった。
「女であるために」の時にも応募してくださっていたけれど、タイミングがあわず撮影はまたいつか‥となっていた。
撮影にあたり普段はどんな感じの服を着ますか?と聞くと「黒、可愛らしいものは着ない」とイメージ通りの答え。
そのまま普段通りの黒い服を着てもらうことにした。
『考える、思うことが好き』である彼女が「黒」を着るというのは、他の色だといろんなことを考えてしまうからかもしれない。
黒は飾る色ではなく、情報量は無に等しい。黒は自分そのままの姿に近いと私は思う。裸以上にそのままの姿を表せるのではないか。裸には裸というパーツの情報量がたくさんあるから、けっこう騒がしいものだ。
表面的な言葉をそのまま受け取らずに、深読みしたり裏を読んだりしてしまうと彼女は自分について話した。そういう性質であるというのは、臆病な部分からなのか、それとも好奇心からなのか。
一見あまり動じないように見える人だ。でも、それは外見の印象で、ホントは少し違うのかもしれない。
元々アート観賞が好きで、生活に人生にアートがないなんてありえない。どんな人間の人生にもアートは身近にあるのに、気がつかないで生きてる人ばかりだよねと、そんな話をした。
「先日ふられたんです」そう教えてくれる彼女の人生には彼女の人生を一緒に過ごしているアートがある。そういう軸を持って生きてるのって自分に向き合う癖みたいなものだろう。
ふられる、かあ。
私はふられるって感じ、よく分からない。
うまく合わなかった。ちょっと違った。縁が無かった。なら分かる。
人間、タイミングが違えば結果も違う。単純に彼とは違ったってことだ。
ふられるはなんかちょっと悲しい。
悲しくなってくる。
タロット占いを勉強中だという。思考するのが好きだから、占うって行為は楽しいだろうと思った。
あれ、でもますます深読みしたりしちゃわないかしら。
私も深読みするタイプだから、占いしたら永遠に考えちゃいそうだ。
考えちゃう人が占いとの距離感を保つのはわりと難しそうだなと思う。
女という人:麻衣子
写真、文章:SAKI OTSUKA