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趣味は人間観察でした。(本を出版するにあたって)

趣味はなんですか?と聞かれたら、「人間観察です」と答えるようにしている。

いや、ついこの間までそう答えていた。

実際に人を観察するのが好きだし、願わくばすべての人の考えていることを理解したいと、壮大に思うこともある。

理解できない発言をする人や行動を取る人に異常に興味を持つ。

ぼくの中で自己紹介の定番となった「趣味は人間観察です」という説明は、仕事以外にほとんど趣味がないぼくにとっては、ウソでもなく他人からある程度理解される都合の良いものであった。

ときどき「おれ(わたし)も観察されているんだ。こわい」と話してくる友人・知人もいるが、それはお互い様だろうと思った。

ぼくもあなたも、多かれ少なかれ観察しあって生きている。

そんな「趣味が人間観察だった」ぼくは2019年の夏から1年かけて、3冊の本を書いた。

1冊目の本は「心にしみる皮膚の話」

この本は、自分が一人前の医者(いまでも成長途中だけど)になるまでの話をまとめた自伝的なエッセイ集だ。

子供の頃、病気をした話。

初恋の話。

医者になってから苦労した話。

ずっと心に引っかかっていた出来事をフィクションをまじえて書き綴った。

「すごく感動しました」という感想をいただくとともに、一部の方からは「読んでいてしんどかったです」とも言われた。


ぼくの感じた悲しみをそのまま実体験として受け取ってくれた読者の方も多かったようだ。

どうしても友人の平くんのことが書きたくて、平くんのご両親の許可を得て記事を掲載させてもらった。

忘れることができない本だ。

それから半年後、2冊目の本を出した。

「最新医学で一番正しい アトピーの治し方」

皮膚科医としてアトピー患者さんを診察する中で感じたこと、また、自分の専門知識を患者さんに伝えようと思いまとめたものだ。

本の前半では、わたしたち医者の言動に対して「おかしい」と思うことを書いた。

勇気を持って本音を書き綴った。

糸井重里さんからは「身も蓋もないくらい」という形容詞をつけて自著を紹介してもらった。

糸井さんが主催するインターネットサイト「ほぼ日」をずっと読んでいた人間としては、糸井さんから拙著についてコメントを頂けるのは夢のようであった。

ありがたいことに、その他、たくさんの方に拙著を紹介してもらった。

例えば、アメリカでがん研究をしている大須賀覚先生。

大須賀先生は、医療情報発信の第一人者だ。

そんな先生からお褒めの言葉をいただいたのは感激だった。

そして、3冊めにこの本を出す。

患者さんが傷つくようなことを言う医者が多いとずっと思っていた。どうしてそんなことを言うんだろう?その疑問と向き合って書いた本だ。

以下に目次を掲載する。

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医者としての日常診療を果たしながら、1年間に3冊の本を出した。

よく「全部自分で書いてるんですか?」と聞かれる。

(ニコっと笑って「はい、ぜんぶ自分で書いてます(怒)」と答えてる)

「忙しいのによくこんなに本が書けますね」とも聞かれる。

その都度「書くのが好きなんです」と答えているが、そんなこともない。

書くのはつらい。

じゃあ、なんで書いてるんだろう。。。?

それはきっと、生きづらさを感じているからだと思う。

思えば、思春期のときからずっと生きづらさを強く感じて生きてきた。

ぼくの生きづらさの原因は、多くの人と同じように対人関係から生まれるものだ。人と感じていることが違う。同じ体験をしても思ったことが違う。

すっかり忘れていたのだが、

高校生のとき、あまりの生きづらさを感じてぼくは「人間を観察する」ことにした。趣味「人間観察」の始まりは、自分の生きつらさを解消するためであった。

残念ながら、観察するだけでは生きづらさは解消されなかった。

医者になって、患者さんを診察して、大学で研究をして、生きづらさを抱えたまま過ごしていた。

ぼくは、観察で埋められなかった生きづらさを、言葉にすることで解消しようとしたんだ。意識して思ったわけではなく、もう表現することでしか生きづらさは解消できなかったんだと思う。

じゃあ、3冊の本を世の中にだして、生きづらさは解消されたかと言うと答えは半分イエスだ。

ぼくの本を読んでくれた方々は、ぼくのことを早い段階で理解してくれており、意思疎通に誤解が少ない。

ぼくの本を読んでぼくが苦手だと思った人は、そもそも近づいてこない。(SNSで絡んでこられることもあるが、リアルで会うことはない)

ぼくの本を読んでくれてないほとんどの人とは、これまでと同じように生きづらさを感じてしまうこともある。

書くことで人間観察が趣味ではないと自分で気がついてしまった。書き続けることで、書くことの苦しさもわかり始めた。

だから、今までみたいに「趣味は人間観察です」とは言えないし、「書くことが趣味です」とも言えない。

ただ、これからも人を知りたいと思う。

そして、書き続けようと思っている。

自分が生きていくために。

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大塚 篤司
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