ほくろの癌 メラノーマ
ほくろの癌をメラノーマ(悪性黒色腫:あくせいこくしょくしゅ)と言います。
日本人では割と頻度の低い癌です。
2011年の調査では、1年間人口10万人あたり1−2人がメラノーマと診断されているようです。
千葉市の人口がだいたい100万人くらいですので、毎年10-20人はメラノーマを発症する計算となります。
そう考えると、決して少なくはないですね。
メラノーマは増加傾向
欧米ではメラノーマの患者さんはもっと多いです。
日本人が10万人あたり1−2人発症するのに比べ、アメリカではその約10倍の10万人あたり約20人発症します。
しかも、メラノーマは近年増加傾向にあります。
アメリカでは、メラノーマの発症率は1982年に比べ約2倍に増えたそうです。
このままのペースだと、2035年には全世界で約30万人の方がメラノーマを発症するという計算がWHO(世界保健機構)から報告されています。
紫外線に注意
さて、メラノーマの原因のひとつに紫外線があります。
紫外線は、しみ・そばかすの原因になるだけでなく、皮膚がんの発症にも関与します。
紫外線、特にUVBは、細胞の中にあるDNAにダメージを与えます。
人の体はこのDNAのダメージを取り除く防御システムをいくつか持っていますので、ほとんどの方は一回のダメージだけで癌にはなりません。
しかし、このDNAへのダメージが繰り返され、修復する体のシステムが年齢とともに弱まってくると癌になります。
メラノーマの発症予防には、小さな子供の頃から日焼け止めクリームを塗るなど、紫外線対策が必要です。
足の裏のほくろはメラノーマ?
マスメディアでは時々、「足の裏のほくろはメラノーマ」と少し大げさに取り上げられます。
これは、日本人の足の裏のメラノーマの割合が欧米人に比べ多いことから言われることです。
欧米人のメラノーマの中で、手足に出来るものが2-3%と報告されているのに対し、日本人のメラノーマは40-50%が手足に発症します。
しかも、メラノーマは古いタイプの抗がん剤や放射線が効きにくく、怖い癌と一般的に思われていることから、「足の裏のほくろには注意」という警鐘をよく聞くことになります。
余談ですが、マスメディアの特集でメラノーマが取り上げられた翌日の外来には、必ず何人か「足の裏のほくろ」が心配で受診されます。
しかし、その殆どの方がメラノーマでないことが多いです。
では、どういうほくろが危険なのでしょうか?
鉛筆の裏で隠せるかどうか?
メラノーマを診断するためのポイント(ABCDルール)などありますが、専門ではない方が参考にできる基準を一つご紹介します。
それは大きさです。
ほくろの大きさが6-7ミリを超えるようであれば、メラノーマの可能性もあるため皮膚科でしっかり診てもらうのが良いと思います。
これは信州大学の私の恩師の受け売りですが、鉛筆の裏でほくろを隠せるかどうか?これが一番わかりやすくて便利な判断基準です。
もちろん厳密には、ちゃんとノギス(ものさし)で大きさを計測しておくのが望ましいです。
まとめ
日本人ではメラノーマの発症は欧米より少ないものの、紫外線の影響で年々増加傾向です。
小さな頃からの紫外線予防を心がけましょう。
また、ほくろは足の裏に限らず、鉛筆の裏で隠せないほどの大きさであればお近くの皮膚科に受診されることをお勧めます。