長い長い病院の待ち時間

私の母校では、患者さんと外来をご一緒するという授業があった。

予め承諾を頂いた患者さんと病院受付で待ち合わせをする。そのまま外来で呼ばれるのを待ち、一緒に医師の診察を見学する。

検査がある場合は、ご一緒に回らせてもらい、最後の会計まで済ませたらお礼を言って解散。

その感想を後日レポートとして提出する。

私がご一緒した患者さんは、心臓に病気があるご年配の男性。患者さんの奥さんも付き添いで来られている。

「大学病院は丸一日かかるからね。」と、朝一番に患者さんから本日の心構えを聞かされた。

学生だった私はまず、9時から始まるはずの診察が9時5分スタートになったことにイラッとしてしまった。

あんなに授業では遅刻に厳しい先生が、診察開始時間を5分も遅刻して何もアナウンスなしかよ。。。

それから1時間、私が担当する患者さんは全く呼ばれることなく時が過ぎる。

「もしかしたら忘れられてるかもしれない。」

奥さんが心配して受付に確認に行く。

「まだかかるって。」そう言いながら僕らの場所に戻ってきた。

「もう少しなにかアナウンスがあるといいですよね。」僕はその老夫婦に同意を求めたが返事はなかった。

それから、レントゲンやら心電図やら、とにかく待ち時間が長くあっという間に(全然あっと言うまではないんだけど)お昼になってしまった。

お会計を済ませた頃には午後になり

「良いお医者さんになってね。」売店で買ってもらったサンドイッチを遅いお昼ご飯として渡されたのを今でも覚えている。


「先生、〇〇さん呼吸が苦しいって訴えてます!!」

よりによって外来予約がパンクしている朝に看護師さんの報告がある。

慌てて検査オーダーを出して外来へと急ぐ。

15分の遅刻。

そういえば病院についてから我慢していたおトイレにも行ってない。

「1時間も待ちました」と不満そうな患者さんに

「おまたせしてすみません。」と頭を下げる。

私も時々、患者さん、患者さんの家族として病院に行く。

患者さんにとっての待ち時間は苦痛であり不安でもある。

「院内で待っててください。いないと困ります。」そう言われるとおとなしく待合室で座っておくしかない。

外来診察後に手術が入っている医師は午前の診察が時間どおりに終わらないと手術室のスタッフ全員に迷惑をかける。

「13時には外来出るから!」そう伝えられた看護師さんは

「診察室前で待っていてください。」患者さんにそう伝えるしかない。

私は残念ながらこの国の医療システムを変える権限をもっていない。それに、もしそういう立場になったとしても上手にかえる能力があるとも思えない。

「今日、先生外来忙しそうで大変だね。」1時間待ったあと優しく声をかけてくれる患者さんがいる。

「3分で終わる診察ならもっと早くにみてください!」怒る患者さんもいる。

一生懸命やってるんだけどな。患者さんに怒られちゃったな。

あの時、患者さんが言ってくれた「良いお医者さん」に僕はなれてないよね。きっと。

帰り道は暗く僕の足取りはとても重い。


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大塚 篤司
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