大塚伸二郎|ひとの居場所をつくる人|大塚工務店四代目

木つくりひとすじ、一世紀。明石の大塚工務店四代目。一級建築士。大工さんをはじめとするつくり手の日常、木の家の住まい手の暮らし、時々息子。人の手がつくる物語をお裾分け。メルマガ「ひとの居場所のつくり方」好評配信中。https://kinoie.life/news/magazine

大塚伸二郎|ひとの居場所をつくる人|大塚工務店四代目

木つくりひとすじ、一世紀。明石の大塚工務店四代目。一級建築士。大工さんをはじめとするつくり手の日常、木の家の住まい手の暮らし、時々息子。人の手がつくる物語をお裾分け。メルマガ「ひとの居場所のつくり方」好評配信中。https://kinoie.life/news/magazine

マガジン

  • 愛について

    大好きなものつくりの源。それは、誰かの為につくること。故郷に育まれた風土。風土から生まれた僕らの手。手仕事から溢れて、手づくりに滲む、愛について語ろう。

  • ひとの居場所のつくり方

    播磨のみんなの原風景になるような家つくりが使命!と腕まくりする大塚工務店四代目が見聞する、つくり手の日常、木の家の住まい手の暮らし。人の手がつくる物語をお裾分け。 「僕の家、パワースポット」 木の家に住む子供達がそんな風に語れる、愛と笑いが集まる暮らし。風土と暮らす木の家のつくり方。

最近の記事

今夜、すべてのバーで

先週末、家の中に家をつくった。 いわゆる、日曜大工の手に依るものである。 オーナーは、ピカピカの一年生になったばかりのJr.だ。生き物とその摂理に興味深々の彼は、自分も巣が欲しいと言い出した。小屋とか家ではない。自らの身の丈にFITした、衣服を纏うことに似た寝床のようなアレである。 実は半年ほど前に、オーナーの意図に背き、薄いベニヤの差し込み式でつくったそれは、三匹の小豚の逸話のように、強い風に倒れたのだった。 故に、オーナーは頑強かつ、希望通りのものを求めた。懇願の結

    • 全うな木つくりの讃歌

      建前当日、まずは、木配りをします。 骨組みは、全部魅せるつくりなので、 帯で吊ります。 大切な材を、痛い思いさせながら 喰い込ませて挟んだりせずに、 包みこむように、縛ります。 着物の帯と一緒です。 だから、ジャンクマンは、いりません。 キン肉マンと正義超人だけで建てます。 志村けんの芸で見る帯。 帯は杉の梁も吊れる道具なのです。 魅せて使うのがあたりまえなので、 紙養生とかは、巻きません。 遠く海の外からやってくる 真っ白な得体の知れない木は、 誰が育てたかわか

      • 僕が生まれる前から大工だった、棟梁のこと。

        スマートフォンスタンドができた。 わざわ座「大工の手」の名物で、コロナ禍に小泉誠さんが、座衆と住まい手の為に、フリーでデザインしてくれたものだ。 栗の木で🌰沢田さんがこさえた。 沢田は、大塚工務店の元棟梁だ。 「ヨッ、大棟梁」 70歳を迎え、社員大工としては、退任。 改めて、一兵卒として、腕がなまらない程度に 今日も、出てきてくれている。 彼は、四代目が小さい頃から、大工として活躍。 僕は、自宅の改装で腕を奮う沢田さんの手元を、 いついつまでも、飽きることなく 眺め

        • 空に蓋をする、ということ。

          空に蓋をするのです。 建築とはそういう行為なのかなあと。 木の家の建前、 即ち、 軸組と呼ばれる骨組みに、 蓋をしていく仕事を 見る度に感じ入ります。 それでいて、 冬の太陽を取り入れ、夏に陰をつくり、 春と秋には風の通り道をつくります。 あゝなんて難しいけど愉しいのだろう! 天窓や高窓で空を切り取れば、 窓は、移りゆく季節を縁取る、 額縁になるのです。 そう 大工は、空の下をつくり 次いで、空に蓋をするのです。

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        • 愛について
          7本
        • ひとの居場所のつくり方
          10本

        記事

          通り抜けフープのコモンセンス

          行きどまらないこと。 回遊できること。 風が通ること。 下北線路街と呼ばれる、小田急線路跡地。 みんなでつくる新しい街。 そこに位置する、低層、分棟、木造の商店建築群。下町の路地のような、商店街のようなオープンスペースのあり方、つくり方。 地域工務店が、挑戦するべき、豊かなコモンのある小規模分譲地のヒントが満載。魅力いっぱいの建築。 マップに図示されるのは… ・HOUSE ・PARK ・WALK Pを手前につくることで、人の営為の中に、車を進入させないこと(←大切)

          想い出は、果実のように。

          例えばSNSを開くと、ちびっこが スイカを早食いしていたり。 どうやら、友人が幼いわが子に、 志村けん方式を伝授したらしい。 こうなると、その背景は、 「縁側」であって欲しい。 夏の終わりに、夏のこと。 ・ 長雨が続く年には、草木がぐんぐん育ちます。 日本もアジアなんだなあと思います。 初夏には、実家の梅の実も収穫。 梅干しや梅酒に変身します。 建て替え現場のびわの木も 橙色の実がたわわになって とっても甘くて びっくりしました。 昔、弟が縁側から投げた、びわ

          素うどんみたいに

          たとえば、ジュニアの要望で ポケモンがもらえると言うので 家族で牛丼屋さんにいく。 送料は附属のポケモンを持って 変えさせて頂きますとばかりに、 小2の息子は自ら、◯◯イーツと名乗り 配達に繰り出している。 という訳で、ばぁばとじぃじ、 も今夜は牛丼である。 けれども、本当は、 仮に、毎日外で食べるとしたら、 牛丼より、 小粋な大将と女将が営む、 食堂がよい。 老若男女が訪れる息の長い、 友達や知人に教えたくなるような。 ・ 木の家のつくり手も、 同じではないかと

          山師の唄を聴け

          山の民たちは、云います。 造成が始まると、透明だった湧水が濁る。 問題は、私たちの目に見える 表面だけの話、では無いのです。 若い頃、大阪は、河内長野の木こりの 元を訪れたことがありました。  おっちゃんは言いました。 切るために植えられた人工林で あっても、町の子供たちから 見れば自然の一部やし、風景なんや。 だから俺は、絶対にハゲ山にはしない。 おっちゃんは皆伐と呼ばれる いっぺんに木を全て切ってしまう 林業手法は選ばず、 より手間のかかる間伐と言う方法を

          庭に土を。

          すべての建築は、土の上に立っている。 土地の上に建つと書くと、何故か土の匂いを感じ得ないが、土という風土の上に木の家はある。 けれども、土に蓋をするように建築は大きく、ひび割れるほどに硬く大きな舗装が土を覆っている。 できるだけ土が顔をだすように建築は小さく構え、人や車が沈まない程度の硬さで、土に蓋をしないように柔らかく地被する。 そんな家や、町の方が、いいと思う。 その土地の土の顔、土の表情、土の色が見えた方がいい。地層という名の断

          林野に想いを馳せて

          朝の連続ドラマ小説「おかえり、モネ」 に見る、林業と漁業、山と海、森と街、 川上と川下はひと連なりなのだという ストーリーをシェアします。 ・ モネの由来は、本名の百音(ももね)から。 これだけでも、なんだか素敵なのです。 主人公のモネが、初めての 仕事に就いたのは、森林組合。 東北は宮城県の林山地が舞台となり 林業が着目されました。 そう、木の家の故郷が舞台なのです。 実は、その番組の解説を、林野庁が 行っているのは、ご存知でしょうか。 登米町の木こりの想い。

          対面キッチンはいらない

          対面キッチンにしたとしても、 こどもに視線を向けるのは難しい。 なぜ、対面キッチンを選択しなかったか? 不躾な問いに、そう答えてくれたのは、 外壁側にキッチンを設えることを 選ばれた住まい手。 キッチンに立つ視線の先には、 大きなピクチャーウィンドウと 窓に合わせて植えた溢れる緑。 ダイニング側には、 造り付けられた作業台はある。 けれども、 作業台の上には何も置かれてなくて 下の棚に、家電もすっぽり納まっている。 ・ 彼女はこう続けてくれました。 対面キッチ

          隠したくなるものは買わない

          隠したくなるものは買わない。 誰かに伝えたくなるような 見ていて楽しくなるような 本当に好きなモノなのか 吟味してから買うようにしています。 工務店仲間が集って、 同じく九州の工務店仲間のOBさま宅へ 暮らしの見学に訪れた際の 住まい手の談話です。 お話を伺ったのは、 異なる工務店のOGでありながら、 いずれもキッチンは壁側にあり、 いわゆる対面キッチンではない。 そして、 システムキッチンではなく、 造り付けてあるなど、共通点は多い。 造り付けと言っても、引

          心の傷を癒すということ

          ー誰も、ひとりぼっちにさせへん。 今日心洗われる映画を、観ました。 息抜きにとひとりで、観ました。 大好きな映画館、旧居留地にある シネリーブル神戸で、観ました。 77年生まれの僕にとって 映画で描かれた世界は、 人生の回顧録のようでした。 自分が小さな頃の未だ知らない神戸。 青春時代を過ごした神戸。 「心の傷を癒すということ」は  今から26年前、阪神・淡路大震災 発生時に、自ら被災しながらも 被災した人々の心のケアに奔走した 若き精神科医 安克昌さんを描いた オリ

          子供室あり方考

          こどもの部屋のあり方を考える。 表題の写真の部屋に、姉妹ふたりの間を 仕切る壁はありません。 小さくても固有の居場所をきちんと つくって、残りはシェアする。 家族が仲良くするだけで 小さな家は、大きく使えるのです。 ・ 子供はすぐに大きくなる。 家つくりの際、 この事実に対する解釈は二通り。 だから、 あまり考えなくてもいい。 or だからこそ、 一緒に過ごせる時間を大切にしよう。 ・ 後者を実現させるためには… 子供部屋を、大きくしてあげる? 四代目

          どこかに美しい村はあるか

          地元明石の次に、大好きな神戸の谷合のまち塩屋。旧明石藩の東の端に位置する神戸はハイカラで、これまた大好きな洋館、旧グッゲンハイム邸があります。 週末、様々な催事の会場にもなる、この古い異人館で開かれた、小さな映画観賞会に出かけました。若干一時間のドキュメンタリー映画は“どこかに美しい村はないか”という題が充てられていました。 今日のシェアは、雪の降らない冬の播磨で見た、長い冬を持つ雪国を舞台にした映画の感想と、人の持つ力について。 ・ 詩人の故茨木のり子さんが詠んだ“

          建築の素性

          今日は、昨今の殺風景な街並みとその構成要素である住宅建築の在り方を見直そうというシェアです。 ・ 犬も歩けば棒に当たると言いますが ブロックの高い塀、 コンクリートのよう壁、 お城よりも高いビル、 街を歩けば、棒ではなくてそんな硬くて冷たい壁に当たるような、無機質な風景が多くなってしまいました。 もっと、創意と工夫を凝らして、ここにしかない在り方で、ここにしかないコトをデザインしよう。 そんなことを考えて、設計者や大工さんと一緒に、協働してものつくり、家つくりをし