
命の羽衣と精霊の絹糸:第11話:「遺跡の真実」(協力:ChatGPT)再改修版
第11話:「遺跡の真実」
――私は、ここに来るべきではなかったのかもしれない。
遺跡の空気は重たかった。冷たく湿った壁が、私とレイの足音を呑み込んでいく。狭い通路を抜けるたび、光が揺らめく。マウが灯している小さな火だけが頼りだ。
私たちは封印の間に辿り着いていた。
「……ここが、最深部?」
私は呟く。広間の中央に何かがある。レイが慎重に近づき、手元の石板を見上げた。
「キカ、この碑文を見て。『精霊の絹糸』と『命の羽衣』のことが書かれてる……」
私は息を呑んだ。命の羽衣――それは私の持っている、あの「布切れ」と関係があるのだろうか。お出かけセットの袋を握ると、指先に妙な感覚が走る。
レイがそっと碑文に触れる。
その瞬間、遺跡の空気が変わった。
壁の奥から、何かの囁きが聞こえた気がした。
「羽衣を取り戻さねば、人間は精霊を制御できず滅ぶ。」
低く響く声。
「……誰?」
私は反射的に周囲を見回した。しかし、レイは動かない。ただ、壁を見つめたまま、静かに口を開く。
「精霊王……マナ?」
壁に刻まれた碑文の文字が、かすかに光る。まるでそこに何かが宿っているかのように。
「……行かなくちゃ」
声が、私の中に直接響く。
彼女の名前は、キカ。
私自身のことなのに、まるで誰かに語られているようだった。
彼女はまだ知らない。
自分が何者なのかも、羽衣が何を意味するのかも。
私は自分の胸に手を当てた。心臓の鼓動が速くなっている。
ただ、どこか遠くで、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
それが誰の声なのか、知ることはできなかった。
「キカ、大丈夫?」
レイの声で、私は現実に引き戻された。
「……うん。ごめん、ちょっとぼーっとしてた」
「碑文の続き、読めそう。『精霊の絹糸』が鍵になるみたい……」
私は頷いた。ここで得た情報が、"未完成の命の羽衣"とどう関係するのかは分からない。
けれど、行かなくてはならない。
私は、何かを取り戻さなくてはならない。
――このままでは、人間は精霊を制御できず、滅ぶ。
遺跡全体が小さく震えた。
「……帰ろう。ここに長くいるのは危険だよ」
レイの言葉に頷き、私たちは封印の間を後にした。
――戻る途中、私たちは"それ"を見た。
「……遺跡の入り口で見たやつだ」
レイが囁く。私たちは通路の影に身を潜めた。
異形の精霊。最初に遺跡へ入ったとき、入り口付近で見かけたそれが、今度は通路の中央にうずくまっている。
「……待ち伏せしてる?」
私の背筋を冷たい汗が流れる。まるで"私たちが戻ってくる"ことを知っていたかのように、そこにいる。
レイが息を殺して、わずかに前へ踏み出した。
「まずい、動き出す……!」
影が蠢いた。
骨が軋むような音がする。精霊というにはあまりにも異形すぎる。関節のあり方が人間のものとは違う。背を丸め、伸びる腕。その指先が、地面を掻くように蠢く。
私は咄嗟に袋を握った。布切れは、ただの布のままだ。力を発揮する気配はない。
どうする?
私たちは完全に視界に捉えられていた。異形の精霊が、首をゆっくりとこちらへ向ける。目が合う――かと思った瞬間、
「今だ!」
通路の奥から突風が吹いた。
「パオ……?」
風の精霊の力だ。しかし、彼はどこに――?
一瞬の隙を突いて、レイが私の手を引く。私たちは駆けた。
「走って! マウ、灯りを!」
後方で炎が揺らめく。どこからか、ハクの声が聞こえた。
「こっちだ! 罠を使う!」
入り口近くに待機していた彼らが、タイミングを見計らっていたのだ。
ハクが足元の石を踏み込むと、遺跡の壁が轟音と共に崩れた。崩落した石が異形の精霊を塞ぐ。
「今のうちに!」
私たちは全速力で遺跡の外へと駆け出した。
外に出た瞬間、私は大きく息を吐いた。
「……間に合った、の?」
ハクが額の汗を拭いながら、静かに頷く。
「ひとまずはな」
しかし、遺跡の奥に響いていたうなり声が消えたわけではない。
私は袋の中の布切れを取り出した。今はただの布だ。何も変わっていない。
「これが"未完成の命の羽衣"……?」
「何か分かったの?」とレイが尋ねる。
「まだ……分からない。でも、"完成させる方法"があるはず」
私は遺跡を振り返った。
あの異形の精霊は、まだ封じられただけだ。完全に倒したわけではない。
"これで終わりではない"。
私は強く布を握った。
次回:「精霊の道の開放」へ続く――。
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