
『風鬼の金棒と精霊の金塊』:第2話『空中都市の暴走』(協力:ChatGPT)
第2話『空中都市の暴走』
1
——何かがおかしい。
足元の浮遊石がわずかに震えている。俺は袋を強く抱えた。
風が狂っていた。
空中都市ハリウは、まるで見えない手に掴まれたように揺れ動いている。建物の隙間から強風が唸りを上げ、空を舞う瓦礫が目の前をかすめた。
「——ッ!」
横を見れば、市民たちが逃げ惑っている。その先——異様な“何か”が、ゆっくりとこちらに向かっていた。
水が立ち上がっている。
それはただの水ではなかった。流動する身体の内部に、**無数の光る脈動があった。**まるで鼓動するかのように明滅し、その光の中心には人間のような輪郭が見え隠れしている。
俺の中で、本能的な拒絶反応が生まれた。
「……なんだ、あれは。」
水がうねり、まるで意思を持つかのように蠢いている。
次の瞬間、そいつは水流の腕を地面に叩きつけ、建物の一部を飲み込んだ。壁が音を立てて崩れる。悲鳴が響いた。
市民が次々と逃げていく。
それを追うように、水の塊はのたうち回りながら、ゆっくりと都市を侵食していく。
精霊の暴走? いや、違う。これは……もっと異質な何かだ。
俺は無意識に袋を握り締めた。その瞬間——。
——異型の精霊が、わずかに動きを鈍らせた。
風が静まる時と同じ。いや、それ以上に、奴らの波打つ動きが鈍くなる。
袋が、こいつらに影響を及ぼしている?
確証はない。ただ、それを考えている暇もなかった。
そいつは、俺の方へ這い寄ってきた。
2
「逃げなさい!」
声がした。
振り向くと、あの女性がいた。
長い髪をなびかせ、鋭い目つきで俺を睨んでいる。
「何を——」
「戦えないなら、逃げなさい!」
女性は叫ぶと、俺の横を駆け抜けた。
——何をするつもりだ?
その瞬間、異型の精霊が彼女に向かって伸びる。
「クソッ!」
俺は腰に差していた武器を掴んだ。
風鬼の金棒。
……使い方は知らない。
けれど、何もせずに見ているわけにはいかない。
俺は本能に任せ、風鬼の金棒を振りかざした。
ゴッ——!
鈍い衝撃が手に返ってきた。金棒が、異型の精霊の身体にぶつかった瞬間——。
——水の塊が、一瞬で霧散した。
「……消えた?」
理解が追いつかない。
金棒を握る手が震えていた。
確かに、殴った。だが、あれほど巨大なものが、一撃で霧のように掻き消えた?
何が起きた?
俺の手の中には、まだ袋がある。
風鬼の金棒を握りしめながら、俺は息を呑んだ。
この袋を持った時から、風鬼の金棒で異型の精霊を消せるようになった?
偶然か? それとも——。
だが、考える暇はなかった。
異型の精霊が新たに生まれ始めていた。
3
「……あれは、ただの水の精霊じゃない。」
低い声が聞こえた。
振り向くと、白衣を纏った女性——サリファがこちらを見ていた。
「お前、知っているのか?」
「ええ。」
サリファは視線を異型の精霊へと向ける。
「水の精霊が生の精霊を食すことで、異型の精霊が生まれるの。」
俺は言葉を失った。
「生の精霊が食われた……?」
「ええ。それが暴走の原因。」
サリファは冷静だった。まるで、すでに答えを知っていたかのように。
「つまり、あいつらを止めるには……?」
「風の精霊に食わせるのよ。」
「……は?」
「風の精霊が異型の精霊を食すことで、『精霊の金塊』が生まれる。」
聞いたことのない言葉だった。
精霊の金塊? 何のために?
「それがどういう意味なのかは、まだ分かっていない。でも、あなたは風の精霊の加護を持っている。」
「……証拠は?」
サリファは俺の手元を指した。
「あなた、異型の精霊を金棒で消したでしょう?」
俺は無意識に武器を見た。
風鬼の金棒——。
「風の精霊の力が宿る神器。その加護を持つあなたなら、異型の精霊を討てる。」
確かに。事実として、俺はさっき金棒で奴を消した。
でも、それだけじゃない。
俺の手には、袋がある。
……これが影響している?
だとすれば、この袋は……?
「考えるのは後だ。」
俺は金棒を握り直した。
都市は崩壊の危機に瀕している。
異型の精霊が、さらに増殖を続けていた。
「……やるしかないか。」
風が唸る。
——俺の戦いが、今始まる。
(第3話『風鬼の金棒と未完成の神器』へ続く)
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