
第3ステージ『水の円盤と精霊の法水』:第1話『水の惑星への到着と捕縛』(協力:ChatGPT、Gemini)
第1話『水の惑星への到着と捕縛』
私の名はポリナ。
水の都市を守護する巫女であり、この地に渦巻く異変の真相を探る者。
だが、私の足元に広がるのは、静寂と波音だけが支配する異様な都市だった。
海水がじわじわと侵食し、石畳の道を覆い隠していく。
その波の動きは、不気味なほどに規則的だった。まるで何かに導かれているかのように。
(海の精霊が……暴走している。)
私の手の中には、未完成の「水の円盤」があった。
本来であれば、この円盤は精霊の動きを読み解き、都市の安全を守る羅針盤となっていた。
だが、今のそれは不安定で、波打つ針は狂ったように方向を示している。
北を指していたかと思えば、突然南へ跳ね、次の瞬間にはぐるぐると回転を繰り返した。
(これでは、何もわからない……)
私は円盤を握り締め、歯を食いしばった。
精霊たちの暴走は自然の流れ。
それでいい。
遠くから足音が聞こえた。
整然とした足取り。青い鎧の警備兵たちが、冷徹な目でこちらに向かってくる。
彼らは規律を守る者たち。任務を全うしようとしている。
偽りではない。本物の忠誠心だ。
「おい、止まれ!」
先頭の兵が鋭い声を上げ、目の前で立ち止まった。
私は静かに頷き、威厳を崩さぬように口を開いた。
「報告は?」
「はい、侵入者を発見しました。少年と少女の二人です」
「……そう」
侵入者。
水の都市が浸食されるこの異常事態に、何の用があって迷い込んだのだろう。
(いや、迷い込んだのではない。目的があって来たに違いない。)
私は目を細め、遠くの廃墟を見つめた。
その時だった。強烈な風が吹き荒れ、砂埃が舞い上がった。
その中心に、一本の金棒を構える少年の姿があった。
「……あれは、風の精霊の力?」
風を操る金棒。神器が完成してるのか?
それはこの都市には存在しないはずのもの。
ならば、あの少年は……風の惑星から。
そして、その隣に立つ少女――。
彼女は少し怯えた表情で、何かを探し求めるかのように、都市の奥を見つめている。
私は静かに微笑んだ。
彼らがここに来た理由。
それを見極めることが、次の一手になる。
「案内しなさい」
「はっ!」
警備兵たちが道を開ける。
私は優雅に一歩踏み出し、二人の前に立ちはだかった。
風の金棒を構える少年が、鋭い目で睨みつけてくる。
だが、その目に宿る強い意志。
私は直感的に感じた。
この少年は、ただの侵入者ではない。
(風の精霊を操る者……興味深いわね。)
私は唇を微かに動かし、冷淡に言い放った。
「よく来たわね」
少年の目が、驚きに見開かれた。
私の存在が、予想外だったのだろう。
(さて、どう出るかしら?)
私は微笑みを絶やさず、彼らの動きを見守った。
未完成の水の円盤が、再び狂ったように回転を始める。
その針が指し示す先に、何があるのか――。
(水の精霊よ、この不安定な羅針盤の先に、答えがあるのなら……)
私は目を閉じ、一瞬だけ祈りを捧げた。
波音が遠くで囁く。
それは、今もなお暴走を続ける精霊の声だった。
(……私には、)
再び目を開けた時、私はすでに笑みを消していた。
冷酷な巫女として、彼らに立ちはだかる覚悟を決めていた。
(さあ、試してみなさい。あなたたちの力を。)
風の金棒を構える少年が、口を開いた。
「あなた、誰だ?」
私は静かに名乗った。
「私はポリナ。この都市の巫女よ」
私は目の前で繰り広げられる光景に、わずかに眉をひそめた。
風を纏う少年が、少女から何かを奪い取った瞬間、少女の顔が憤怒に染まった。
「え、ちょっと、何するのよ!」
その叫びが、水の都市に響き渡った。
私はその様子を冷静に見つめながら、内心で考えを巡らせる。
(あの二人、仲間ではなかったのか?)
「今は説明してる暇はない! 行くぞ!」
少年が少女に背を向けて駆け出す。その動きは素早く、まるで風そのもののようだ。
私は目を細め、彼の手に握られている袋に視線を注いだ。
(あの袋に……何が入っているの?)
だが、考える時間はなかった。
「捕えろ!」
私は冷淡な声で命じた。周囲に待機していた警備兵たちが、一斉に動き出す。
彼らは私の言葉に忠実だ。海の都市の秩序を守ることが彼らの使命。
そして、この異常事態を正すために、私に協力しているに過ぎない。
私は操っているわけではない。むしろ、彼らはこの都市を救うために戦っている。
少年は袋を抱えたまま、風の精霊の力を巧みに操り、警備兵たちの攻撃をかわしていく。
「待て! そいつを逃がすな!」
「袋を取り返せ!」
警備兵たちの怒声が飛び交う。
だが、少年は風を足にまとわせ、宙を舞った。金棒を地面に叩きつけると、突風が巻き起こり、警備兵たちの動きを封じた。
私は風の渦を見つめながら、唇を噛みしめた。
(風の精霊……やはり、この都市にも影響が及んでいるのね)
「待ちなさい!」
私は手を伸ばしたが、届くはずもない。少年は軽々と屋根の上へ逃げ去った。
残されたのは、怒りに震える少女と、袋を奪われた悔しさを露わにする彼女の表情。
「クー! あんた、何で逃げるのよ!」
その叫びが、私の耳に残った。
(クー……それが彼の名前?)
だが、少女が彼の名前を知っているのに、怒りを顕にしていることに疑問が浮かんだ。
「今、都市がこんな状態になっているのは……どうしてなんですか?」
少女が私に問いかける。彼女の瞳は何かを訴えかけてくるようだ。
その様子から、彼女はこの異常事態に巻き込まれた被害者であり、協力を求める相手だと確信した。
「これは、海の精霊の暴走によるものよ」
私はあえて冷静な声で告げた。
「暴走……?」
少女の顔が驚愕に染まる。
「そう。だからこそ、あなたに協力してほしいの」
私は一歩、彼女に近づいた。彼女は怯える様子もなく、むしろ意を決したように私を見上げた。
「……わかりました」
少女は頷き、私の側に立った。
私はその姿を見て、内心で安心した。
(仲間割れ……そういうことだったのね)
少年が奪った袋の中身は何か、私にはわからない。
だが、彼がそれを守ろうとして逃げたこと、そしてこの少女が彼に怒りを抱いたこと。
それだけで十分だった。
私は都市を浸食する海水を見下ろしながら、冷酷な決意を胸に秘めた。
この異常事態を正すためなら、手段は選ばない。
そして、この少女の協力を得て、あの少年を追い詰める。
波の音が遠くから響き、都市全体に不気味な静寂が広がっていた。
(絶対に、逃がさない)
私は冷たい笑みを浮かべ、少女と共に歩き出した。
(第2話:『停滞する水の都とポリナの信仰』 へ続く)
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