
第3ステージ『水の円盤と精霊の法水』:第2話『停滞する水の都とポリナの信仰』(協力:ChatGPT、Gemini)
第2話:『停滞する水の都とポリナの信仰』
水の都市を守護する巫女であり、この地に渦巻く異変の真相を探る者。
しかし今、私の目の前には予想外の存在が立っていた。
「……あなた、誰?」
少女は少し怯えた様子で、真っ直ぐな瞳で私を見つめていた。
髪は濡れた藻のように艶やかで、瞳は海の色を映し出したような青。
だが、その奥には何か激しい光が宿っている。
「私? 私は……キカ」
彼女は少し躊躇った後、名乗った。
キカ――それが、あの騒動に巻き込まれた少女の名前。
風の金棒を持つ少年、クーが奪った袋の持ち主でもある。
だが、それ以上に気になるのは彼女の存在感だ。
まるで、この都市と共鳴するかのような――。
「キカ、ね。ここで何をしていたの?」
私は穏やかに問いかけた。敵意は感じられない。
だが、油断は禁物だ。
「……水の精霊王に会いに来た。」
キカは不安げに辺りを見回した。
その仕草に、作為的なものは感じられない。
――なぜなら、私が見たのだ。
未完成の「水の円盤」が、キカに近づくたびに激しく反応していたことを。
「この都市は今、危険よ。精霊が暴走しているの」
私は注意深く言葉を選んだ。
キカの瞳が揺れ動く。
「知ってる……」
彼女は精霊の存在を知っているようだった。
だが、恐怖の色は見えなかった。
むしろ、その目には哀しみが浮かんでいるように見える。
「そうよ。だから、早く避難しなさい」
私は冷静に告げた。これ以上、この少女を巻き込むわけにはいかない。
だが、キカは頑なに首を横に振った。
「いやだ。私は、知りたいの。この都市が、どうしてこんなことになっているのか」
その言葉には、強い意志が込められていた。
私がかつて持っていた信念――精霊を守り、都市を安寧に保つ使命。
その記憶が、キカの瞳に重なった。
直感が警鐘を鳴らす。
だが、それでも私は彼女を拒めなかった。
「……好きにしなさい。でも、危険が迫ったらすぐに逃げること。いい?」
私はため息をつき、条件を付けた。
キカは力強く頷く。その瞳には、決意が宿っていた。
その時、背後から足音が聞こえた。
振り返ると、そこにはクーが立っていた。
風の金棒を肩に担ぎ、笑みを浮かべている。
「やっぱりここにいたか。精霊の巫女様」
彼の言葉には、明らかな侮蔑が含まれていた。
私は眉をひそめ、冷たい視線を投げかける。
「……何の用?」
クーは肩をすくめ、軽い調子で答えた。
「別に。ただ、見に来ただけさ。あんたがどんな顔をするのか」
その言葉の意味が、すぐには理解できなかった。
だが、次の瞬間、背筋に寒気が走った。
――まさか、クーが精霊の暴走に関与しているのか?
「精霊を操ることなんて、誰にもできないはずよ」
私はあえて挑発するように言い放った。
だが、クーは鼻で笑った。
「ふっ…… 甘いね、巫女様……」
「……何ですって?」
クーは金棒を地面に突き刺し、嘲笑を浮かべた。
「精霊なんてのは、良いも悪いもない。ただ、自然に任せて動くだけさ」
「それは違う! 精霊には意思がある。善なる心が――」
「それは、あんたがそう思いたいだけだ」
クーの瞳には冷酷な光が宿っていた。
「精霊は善なんかじゃない!」
私は言葉を失った。
信仰の根幹を揺るがすその言葉に、反論する術を見失った。
その時、キカが一歩前に出た。
「……違う」
彼女の声は震えていたが、確かな意志を感じた。
「精霊は、そんな存在じゃない。私は……感じたもの。温かさを!私の袋を返して!」
その言葉に、クーは一瞬だけ驚いた表情を見せて、袋を握り締めた。
だが、すぐに冷笑へと変わった。
「……へえ、面白い。じゃあ、その幻想がどこまで続くか、見届けてやるよ」
クーは踵を返し、風を纏って立ち去った。
その背中を見送りながら、私は胸の中に渦巻く不安を拭えなかった。
(精霊に善はない……?)
信じていたものがほんの少し揺らぐ。
だが、キカの瞳に宿る光が、私をかろうじて現実に繋ぎ止めていた。
「……ポリナさん、信じてもいいの?」
キカの問いかけに、私はゆっくりと頷いた。
「ええ、信じなさい。あなたが感じた温かさを」
そう答えながらも、私の心は揺れていた。
信仰が崩れ去る恐怖と、キカの存在がもたらす希望。
その狭間で、私は一筋の光を探し続けていた。
水の都市を包む波音が、不安をかき消すように響いていた。
(第3話:『水の神殿と精霊王ワイナの怒り』 へ続く)
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