12/8の破壊者
12月8日。
昨日は珍しく雪が降った。
局地的な雪で、天気予報にも予報されないような、静かな雪だった。
降り積もることもなく、降っては消えた。
クリスマスの時期だな。
すっかり忘れていたけど、秋が終わり冬が始まったんだ。
この部屋へ来て、一週間。
食料も尽きた。
部屋を荒らして、クレジットカードやキャッシュカード、なんでもいい、お金になるもの。
探したけど、何も出てこなかった。
財布には千円札が一枚。
この女、どんな生活して生きてきたんだ。
目は正気を失っている。
いつ死んでも良いような顔している。
そのわりには、トイレに行きたい時だけ、必死のアピールをしてくる。
腹も空いているだろう。何も食べさせていない。
俺の食い扶持だけ保たせるので精一杯だったから、女のことまでかまってはいられなかった。
この女の人生は今まで最低な暮らしだったのだろうか。
このボロボロのアパート、鍵のかからないアパートを見てもわかる。
シャワーはあるけど、薄ら寒い。
お湯に浸りたい。バスタブが無く、シャワーだけでは夜は厳しい。
体が直ぐに冷え込んでしまうから、風邪をこじらせやすいだろう。
そう言えば、シャワーにも入れさせてないな。
裸で風邪を引かれても迷惑だし、逃げられて裸のまま警察に行かれても困るから、トイレだけは連れて行ってやっていたが、シャワーは使わせてやってない。
一週間同じ服、それは俺も同じか。
臭いのだろうな、さぞかし。
このままここで野垂れ死ぬのか。
餓死して死ぬのか。
この女が先なのか、俺が先なのか。
もう騒ぐ元気もないか、口だけでも外して、金の在り処でも聞くか。
殺すなんて事はやりたくないし、俺もまだ死にたくない。
意地悪いけど、がむしゃらにまだ生きていたい。
話し合って、逃げないと言えば、手足も解いてやろう。
しばらくは二人の逃亡生活になるのだろうから。
様子を見て、俺の家から持ってこれるものは全部この部屋に持ってこよう。
警察が近くにいないとも限らないから、この女を説得させて、うまく使えれば、まだ籠城生活は続けられる。
この女も少しはまともな暮らしがしたいだろう。
こんな形で死にたくもないだろうから。
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