見出し画像

シュレーディンガーの子猫 ~余波:セクション7~

な、なんだ。
どうなっているんだ。キモチワルい
これは悪い夢でも見ているんだろう。
目を覚ませ!俺!!
モンスターでも追いかけてくる夢でも見てるのか?
くっそ!いやだな~。
俺は首元のネクタイがキツく感じ、Yシャツのボタンを一つ外して、襟元にゆとりをもたせ首を撫でる。夢の中で変な汗をかいていると感じた。

きっと、あの猫は「シュレーディンガーズ・カッツェ」っていうスタンドで俺はジョジョの世界に迷い込んだに違いない。

いやいや、何を馬鹿な。そんな非現実的なことは週刊漫画で十分だ。
なんで誰も居ないんだ。
俺はビル中を走り回った。
唯一行きたくない場所を除いて。

もう、あそこしか無い。
昨日までの嫌な思いが再び溢れ出してくるのを感じた。

ザザザザッ タ・タスケテ ザザザザッ
ノイズが頭の中に響いた。

そして今度は、目の前の景色にもノイズが走り、まるでピントの合わないレンズ越しに景色を見ているかのように輪郭がぼやけていく。
度のあわないメガネで景色を見ているのか、メガネを忘れた近視状態で景色を見ているかのようでとても具合が悪い。
目を閉じて眼頭と鼻の間にある「晴明(せいめい)」と言うツボを押した。
何処かのサイトで読んだことがある「眼頭にある「晴明(せいめい)」のツボを、親指と人差し指でつまむように押すと、目の周りの血流がよくなり、眼精疲労や充血、ドライアイが解消されます」と書いていたのを思い出した。
このツボは安倍晴明みたいな名前だなと、下らないことを頭に思い浮かべた。
今の自分の状態が夢の中にあるということを思い出し、自分の夢ならばコントロールできるだろうとそっと目を開ける。
先程までのノイズは消え去り、行きたくない場所の扉がくっきりと浮かび上がった。
俺は勇気を出して、あそこが出口だと決めて前へと進んだ。
扉に手をかけようとすると、中から怒鳴り声が聞こえた。
俺はとっさに手を引っ込め、開けるのをためらう。
「バカヤロー!この仕事がどれだけ大事な仕事なのかわかってるのかよ!お前がやってることは詐欺だよ!お客様との関係を何だと思ってんだ!こんな馬鹿なやつだとは思わなかったよ!お前みたいなやつはここから飛び降りて死んじまいな!」
ボコッ!
ゴホッゴホッ!
と、止めなきゃ!これは暴行事件だ!パワハラだ……
あの時の俺と同じ……
あの時??
そっと扉を開けて中を覗くとそこには、腹を蹴られて痛みに耐えかねてうずくまる俺の頭を、ハイヒールの靴で踏みつける女上司の姿があった。
俺の角度から女上司のタイトスカートの中が黒いレースの下着だったのかと丸見えになっていたとしても、ドMではない俺にとっては屈辱でしか無く、何の喜びもない。
むしろ怒りに震えて握る拳に力が入っている。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

次回予告:

扉を開けて飛び込んで止めさせようと思っても、扉を握る手が接着剤で引っ付いているかのように離れない。
恐れている。
それにまた消えるかもしれないと思っている。
これは俺の悪い夢で、俺の記憶から再生されている映像だ。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 250

いつもサポートありがとうございます♪ 苦情やメッセージなどありましたらご遠慮無く↓へ https://note.mu/otspace0715/message