
命の羽衣と精霊の絹糸:第12話「精霊の道の開放」(協力:ChatGPT)再改修版
第12話「精霊の道の開放」
遺跡が揺れた。
不気味な振動が地面を這い、壁に埋め込まれた古代の紋様が青白く発光し始める。まるで何かが目覚めるのを喜ぶかのように、遺跡そのものが鼓動しているように感じた。
「まずい、崩れるぞ!」
ハクの声が響く。遺跡の入り口付近にいる彼らは、既に崩落しつつある天井を警戒し、外へ出る準備をしていた。
入り口へ急がねばならない。足元に転がる破片を踏み越えながら、レイの手を引く。
「レイ、大丈夫か?」
彼女は何かに気を取られたように振り返った。瞳には強い疑念が宿っている。
「…変だわ。何かが、ここを開こうとしている。」
彼女の呟きと同時に、遺跡の奥から耳をつんざくような奇声が轟いた。空気が震え、冷たく粘つく風が吹き抜ける。
振り返ると、影のようなものがゆらめきながら広がっていた。それは壁や床に絡みつきながら、異形の何かを形作ろうとしているようだった。
「封印が完全に解けた…!」
マウの声が遺跡の外から聞こえた。しかし、その言葉の意味を理解する前に、さらなる異変が起こった。
空間が裂けた。
正確には、遺跡の中心にぽっかりと黒い亀裂が生じたのだ。裂け目の奥には何も見えない。ただ、吸い込まれるような感覚と、聞き慣れない低い唸りが響いている。
「…あれは?」
足がすくむ。視線を動かしても、そこにあるのは異質な闇だけだった。
「こんなものが開くはずがない…!」レイが息を呑む。「ここは…精霊の道…?」
言葉の意味がわからない。ただ、尋常ではないものが生まれたことだけは確かだった。
遺跡の振動が激しさを増し、天井の石が降り注ぐ。レイの腕を強く引いた。
「外へ出ろ!」
彼女はうなずき、必死に入り口へ走る。しかし、その直前で目に見えない力が彼女を弾いた。
「レイッ!」
レイの体が宙を舞い、そのまま入り口の外へと放り出された。
外に出たのだ。
彼女は無事だ。そこに仲間がいる。安心感が胸を満たす。
だが、次の瞬間、足元の重力が歪んだ。
視界が揺れ、気づくと身体が後ろへ引っ張られていた。何かが私を捕まえたわけではない。あの黒い裂け目が、まるで餓えた獣のように私を呑み込もうとしている。
「っ…!」
踏みとどまろうとするが、抗えない。圧倒的な力で足が地を離れ、意識が闇に包まれる。
——精霊の道が、開いた。
目を覚ましたとき、そこは見知らぬ場所だった。
足元はざらついた岩場で、遠くには風に吹かれる草原が広がっていた。空は奇妙なほど青く、空気が澄んでいる。
「…どこだ、ここは?」
手を動かしたとき、違和感を覚えた。何かがない。
お出かけセットが、消えていた。
辺りを見回す。遺跡の瓦礫のようなものはなく、代わりに一人の男が立っていた。
彼は布切れの入ったお出かけセットを手にしていた。
「おい、それ——!」
言い終える前に、男はくるりと身を翻し、風のように走り去った。
追うべきか、状況を把握すべきか。思考が混乱する。
ただひとつ確かなのは——
私は、知らない場所に来てしまった。
(次回:第2ステージ「風鬼の金棒と精霊の金塊」 へ続く)
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