
『風鬼の金棒と精霊の金塊』:第8話『風鬼の金棒の完成』(協力:ChatGPT)
第8話『風鬼の金棒の完成』【前編】
俺たちは崩れかけた遺跡の奥深くにいた。空気は冷たく湿っていて、壁を撫でる風の音が不気味な囁きに聞こえる。キカの肩越しに、石壁に刻まれた古い壁画を睨みつける。そこに描かれているのは、人間と精霊が肩を並べて武器を鍛える姿だった。
「これが……風鬼の金棒の元になった神器?」キカが小さく呟く。
俺は無言で頷く。胸の奥で、何かがざわつく。あの袋を奪ったときから、ずっと何かが狂っていた。風の精霊たちの暴走、異形の精霊の出現、そしてこの都市の崩壊……全部、俺が袋を手にした瞬間から始まったんじゃないのか。
壁画にはもうひとつ、奇妙な場面が描かれていた。完成した神器を掲げた瞬間、人間たちの影が歪み、精霊の形に変わっていく。まるで、神器が人間と精霊の境界線を溶かしてしまうみたいだった。
「クー……これ、どういうこと?」キカの声が震えている。
「知らねぇ。でも……このままじゃ駄目だってことだけはわかる。」
俺は拳を握りしめた。あいつらを止めなきゃならない。都市の中心部では、異型の精霊たちが天を覆うほど膨れ上がり、風のうねりが建物を粉々に砕いている。
「行くぞ、キカ。風鬼の金棒を完成させる。」
鍛冶屋の工房はひび割れた窓から砂嵐のような風が吹き込んでいた。炉の火は今にも消えそうだ。俺は未完成の金棒と、集めた精霊の金塊を台座に置く。
「おい……火を起こせるか?」俺は鍛冶屋の老人に叫んだ。
「無理だ!この暴風じゃ、炉がもたねぇ!」
「だったら俺がやる。」
俺は床に膝をつき、金棒に手をかざした。手のひらが切れそうなほどの風が、俺の体を襲う。だけど俺は目を閉じ、風の流れを感じた。精霊たちの叫び声が、風に混ざっている。
「……お前ら、黙れ。」
俺は手を握りしめ、金塊に触れた。冷たい金属が、皮膚に焼き付くほど熱を帯びる。
「俺は、お前たちを抑えるんじゃねぇ……導くんだ。」
その瞬間、金塊が淡く光り出し、金棒が軋む音を立てた。炉の火が、突然燃え上がる。
「クー!」キカが叫ぶ。
俺は金棒を持ち上げ、金塊を打ち付けた。火花が飛び散り、金棒が震え出す。
「終わらせるんだ……!」
俺は渾身の力で最後の一撃を叩き込んだ。金棒が鈍い音を立て、光を放つ。そして俺は、完成した神器を握りしめた。そこには俺の体に刻まれたトライバルデザインと同じ模様が描きこまれていた。
金棒を地面に叩きつけると、都市を覆う暴風が一瞬止まった。
「これは……?」
でも、悪寒が背骨を這い上がる。
静寂の後に、何かが、目覚めた。
第8話『風鬼の金棒の完成』【後編】
俺は金棒を握りしめたまま、荒い息を吐いた。さっきまで都市を引き裂いていた暴風が止まり、辺りは不気味な静寂に包まれている。だが、それは嵐の前の静けさにすぎない。
「キカ、袋を返す」
俺は腰の袋を引きちぎるように外し、彼女に突き出した。
「……クー?」
「お前が持ってろ。俺はやることがある」
キカは迷いながらも、俺の真剣な目を見て頷いた。
俺は鍛冶屋の工房を飛び出し、街の中心部へと駆け出す。風鬼の金棒が手のひらに馴染んでいる。神器として完成したそれは、まるで俺の一部になったような感覚を与えてくる。
異型の精霊たちが蠢いている。建物の影、崩れた瓦礫の隙間、ひび割れた地面の裂け目——どこもかしこも歪んだ精霊の姿で溢れ返っていた。ねじれた四肢、溶けた顔、歯が無秩序に並んだ口。奴らの形はもう、もはや精霊と呼べるものではない。
「俺はお前らを止める」
そう呟くと、金棒が低く唸った。風が俺の周囲を巻き込み、旋風を生み出す。
「吹き飛べ」
俺が金棒を横に振ると、風が唸りを上げ、異型の精霊たちを飲み込んだ。暴風は奴らを裂き、霧散させる。断末魔の叫びが響くが、もう俺の耳には届かない。
俺は駆け続けた。風の精霊たちは俺を拒絶しない。むしろ、俺の力を後押しするように風が流れ、都市の道を開いていく。
——そして、中心部にたどり着いた。
異型の精霊、最終形態へ
そこにいたのは、膨れ上がった異型の精霊の塊だった。無数の精霊が絡み合い、融合し、ひとつの巨大な存在へと変貌を遂げている。建物を押し潰しながら成長し、黒い渦を中心にして風を巻き上げていた。
「……これが、お前らの行き着く先かよ」
異型の精霊は都市全体を飲み込もうとしていた。巨大な暴風が発生し、瓦礫が宙に舞い、俺の足元の地面すら浮き上がりそうになる。
「クー!」
背後からキカの声がする。彼女も俺を追ってここまで来たのか。だが、今は振り返る余裕がない。
「これは俺たちが終わらせる」
俺は風鬼の金棒を振り回し、さらに都市の中心部へと踏み込んでいく。足元が揺らぐが、風が俺を支えてくれる。
「行くぞ、キカ」
「うん!」
キカも俺の隣に並んだ。
俺は金棒を構えた。次の瞬間——
都市の風が、すべて止まった。
まるで時間が凍りついたように、風の流れが消失する。瓦礫が宙に静止し、異型の精霊の動きすら止まる。
——静寂。
それは、まるで嵐の目にいるような、不気味な無音。
「……始まるぞ」
俺は金棒を強く握りしめる。
(第9話『飲み込まれる都市』 へ続く)
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