
命の羽衣と精霊の絹糸:プロローグ「燃える空、消えゆく羽衣」(協力:ChatGPT)再改修版
プロローグ
燃える空、消えゆく羽衣
僕たちの世界を
君たちが作ったんだ。
随分昔の話になるから、記憶も定かじゃないけれど、この世界を創造したのは、君たちなんだよ。
人は記憶を伝えるために物語を紡ぎ、文化を築き、そして僕たち精霊を生み出した。
忘れちゃったのか?
人の経験を、次の世代へ伝えるために。
見えないものを、形に残すために。
夢や希望、喜びや悲しみ、戦いの記録さえも――そのすべてを紡ぎ、織り上げるために「命の羽衣」は生まれた。
「命の羽衣」は、ただの神器ではない。
それは「記憶の織物」であり、過去の経験を刻み、未来へと受け継ぐもの。
人々の願い、痛み、愛が絡み合い、絹糸のように紡がれ、羽衣へと縫い込まれていく。

命の羽衣
夜の大陸に、黒い炎が揺らめいていた。
それは炎でありながら、光を拒む。
影のように蠢き、音もなく広がるその業火は、精霊の力が歪められたものだった。
「間に合わなかったか……」
キリは膝をついた。
彼女の背から「命の羽衣」が引き剥がされ、遠ざかっていく。
羽衣を抱えるのは、長い黒髪を風に遊ばせる青年――マル。
彼は影に紛れながらも、その手の震えを隠せていなかった。
「……返せ……それは……!」
キリの声は届かない。
マルは、ぎゅっと羽衣を抱きしめる。
「……これは、俺の……俺のものじゃない……!」
マルの瞳は揺れていた。
迷いがある。だが、その迷いの奥には、命じられた使命が影のようにへばりついている。
「……これは、精霊たちの未来のためのものだと、言われた……」
震える声で、マルは自分に言い聞かせるように呟いた。
キリは、その言葉にわずかに目を細める。
「……誰に言われた……?」
マルは答えない。
その問いに答えることができないほど、彼自身も追い詰められていた。
影の精霊として、命じられるままに動いた。
でも――本当に、これは正しいことなのか?
「……お前に……お前に押しつけられた運命じゃないだろう!」
キリが叫ぶ。
マルはぎゅっと歯を食いしばった。
その時――
光が弾けた。
マルの腕から、命の羽衣が引き裂かれるように浮かび上がる。
その瞬間、マルは息を呑んだ。
精霊の声が、波のように押し寄せる。
「……羽衣が変わった……」
「人の意思を宿すものが、変わった……」
「これで、均衡は破れた……」
大地が震える。
空がねじれる。
夜の大陸を覆う精霊の流れが、かすかな悲鳴を上げる。
「……ああ」
キリは、理解してしまった。
「命の羽衣」は、ただの布ではない。
それは、精霊と人間を繋ぐ最後の鎖だった。
それが今、引き裂かれた。
精霊は、もう人間を信用しない。
人間は、もう精霊を制御できない。
「これは……取り返しのつかないことになる……!」
だが、もう遅かった。
キリの体が、何かに絡みつかれるように硬直する。
――精霊たちが、彼女を見つめている。
「宿主を失った羽衣の代償は、命で支払え」
誰かが、そう囁いた気がした。
次の瞬間、暗闇が彼女を包み込む。
そして――キリは、精霊に喰われた。
静寂
あれほど騒がしかった精霊のざわめきが、ぴたりと止んでいた。
「……羽衣が……なくなった……」
誰かが呟いた。
その瞬間、大気が乱れ、天地が裂ける。
「……終わった……終わったんだ……!」
マルは震える。
彼は羽衣を奪った。
だが、何かが違う――これは、望んだ未来ではない。
だから、彼は逃げた。
その場にいた誰もが理解した。
もう、後戻りはできない。
命の羽衣が消えたことにより、精霊と人間の関係は崩壊した。
火は燃え続ける。
水は奔流となる。
風は暴れ、土はひび割れる。
精霊たちは、かつての均衡を捨て、新たなルールを求めて動き出した。
そして――
この世界は……
時は流れ……
精霊は日々生まれ、またすぐに散りゆく。
その短い命は、まるで消費される資源のように、合成されながら新たな力となる。
誰もがその一瞬の輝きの価値に気づきながらも、時には敵視し、時には希望の灯火として求める。
鏡花水月、水月鏡花――それが、この混沌とした時の流れそのものなのだ。
「羽衣を取り戻さねば、人間は精霊を制御できず滅ぶ。」
精霊王マナが、告げる。
「……行かなくちゃ」
彼女の名前は、キカ。
彼女はまだ知らない。
自分が何者なのかも、羽衣が何を意味するのかも。
ただ、どこか遠くで、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
それが誰の声なのか、知ることはできなかった。
この因縁に満ちた物語は、今、冒険の第一歩を踏み出そうとしている。
精霊の儚い命の、そして文化と記憶の継承が交錯する中、若き運命の担い手が、精霊の絹糸に導かれ、新たな試練と邂逅を迎える。
――君たちが紡いだ記憶と希望が、次なる未来への扉を開くために。
第1ステージへ続く――。
(1.精霊の街での目覚め へ続く)
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