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命の羽衣と精霊の絹糸:第8話「隠された扉」(協力:ChatGPT)再改修版

割引あり

第8話「隠された扉」

 ──遺跡の奥、静寂が支配する闇の中、私はレイと二人きりだった。

 壁画の裏にあった隠し通路を抜けた先で、私たちはそれを見つけた。

 巨大な扉。

 無骨な石造りで、触れれば冷たく、まるで遺跡そのものが生きているような不気味な感触がする。扉の中央には、どこか欠けた羽衣の紋章が彫られていた。かつて「命の羽衣」が完全な姿で存在していたという壁画の情報が、ここに繋がるのだろうか。

 「……開かないね」

 沈黙を破ったのはレイだった。彼女は巫女として封印の術に詳しいが、今のところこの扉の仕組みは分からないらしい。

 「レイ、何か分かる?」

 「待って……」

 彼女は慎重に扉へ近づき、指先を這わせるようにして紋章の縁をなぞった。まるで何かを読み取るように。

 ──ピクリ。

 その瞬間、私は違和感を覚えた。

 どこからともなく、微かな風が吹き抜けたのだ。

 ……風?

 この遺跡の奥で、風が吹くはずがない。入り口からここまでの道のりはすべて閉ざされていたのだから。

 「レイ、今の……」

 「うん、感じた。何かが……いる」

 レイの言葉に、思わず息をのむ。彼女の視線は、扉の奥ではなく、その周囲へと向けられていた。

 私はゆっくりと足元を見た。石造りの床には砂埃が薄く積もっている。しかし、その砂埃の一部が、まるで何者かが通り過ぎたように細く乱れているのが分かった。

 「……誰か、いるの?」

 思わず問いかけるが、返事はない。

 「でも……気配がある。ここに何かがいた痕跡がある」

 レイがそう言ったとき、突然、

 ──ゴゴゴ……

 鈍い音が響いた。

 扉が、わずかに揺れた。

 私はとっさに後ずさる。レイも驚いた顔をしながら、扉をじっと見つめた。

 ──その時。

 「お前たちは……その鍵を持っているのか……?」

 扉の奥から、かすれた声が響いた。

 私は心臓が跳ね上がるのを感じた。

 誰かが……扉の向こうにいる。

 「誰……?」

 レイが震える声で問いかけた。しかし、返事はない。

 代わりに、扉の紋章が微かに光った。

 「……鍵って、もしかして……」

 私はそっとお出かけセットを開けた。その中には、例の布切れがしまわれている。

 命の羽衣になるかもしれない、まだ何の力も持たない布。

 それを扉にかざすと、紋章の光がほんの少しだけ強くなった。

 だが──

 扉は開かなかった。

 「足りない……?」

 レイが小さく呟く。

 その時だった。

 扉の両脇の壁に、ふたつの細い隙間が浮かび上がった。

 そして、それはゆっくりと開き、暗闇の向こうへと続く二つの通路を作り出した。

 まるで、私たちに選択肢を与えるように。

 「……試練?」

 私は、ぞくりとした寒気を感じた。

 レイが震える声で言う。

 「キカ……この扉、やっぱり普通じゃないよ……」

 私は無言で頷いた。

 「風の試練の間」

 「灯の試練の間」

 壁に刻まれた古びた文字が、ぼんやりと浮かび上がる。

 扉は、まだ開かない。

 でも、その向こうに、何かがいる。

 私たちは、試されている。

 レイと私は、互いに視線を交わした。

 そして、無言のまま、私は足を踏み出した。

(第9話:「風の試練」 へ続く)


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