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命の羽衣と精霊の絹糸:第7話「封印の奥へ」(協力:ChatGPT)再改修版

割引あり

第7話「封印の奥へ」

朝の空気は冷たく澄んでいた。街を出たばかりの道には、昨夜の湿り気がまだ残っている。

「昨日は眠れた?」

隣を歩くレイが、ふとそう尋ねた。

「……ううん、なんかずっと考えてた。」

風の精霊の暴走、祠の影、遺跡の封印の緩み。あの布切れが風に反応した理由。すべてが絡み合っている気がして、頭の中でぐるぐると考え続けていた。

「やっぱりね。」レイは小さく笑う。

「レイは?」

「私も似たようなもの。でも、行くしかないでしょ?」

そう言って前を向いたレイの表情は、決意に満ちていた。

私たちが向かうのは、街はずれの丘にある遺跡。風の精霊を祀る祠の地下に眠る、古い石造りの空間。その入り口は普段、厚い封印によって閉ざされている。

——なのに、封印が緩んでいる?

「時間のせいかもしれないし、他の理由かもしれない。」

レイはそう言っていた。でも、偶然とは思えなかった。

それにしても、気持ちが高ぶっている。興奮なのか、緊張なのか、自分でもよく分からない。ただ、一歩進むごとに鼓動が速くなるのを感じた。

遺跡への道

街の外れを抜け、緩やかな丘を登る。空は雲一つなく、すでに太陽は高かった。

「昨日、巫女たちで祠を調べたの。でも、地下へ続く扉が、いつもより軽く開いたのよ。」

「……軽く?」

「うん。今までは、ほとんど動かないくらいの封印がかかってたのに。」

それはつまり、封印が弱まっているということ。

「けど、昨日はそこまでしか調べられなかった。だから、今日私たちで中を確認しようと思って。」

「分かった。」

足元の草が、微かな風に揺れる。風の精霊がいるなら、ここにはもう何度も訪れているはずなのに——今日はいつもと違う。

空気が、妙に重い。

「……レイ。」

「うん、感じてる。精霊の気配が、普段と違う。」

祠はすぐそこだった。

封印の扉

祠の地下へ続く入り口は、岩のように重い扉だった。表面には、風を象る古い紋様が刻まれている。

「……昨日は、ここが少し開いたの?」

「そう。でも、もう一度閉じたみたいね。」

私はそっと扉に触れる。

冷たい。けれど、まるで呼吸をするかのように、ほんのわずかに震えている気がした。

「押してみよう。」

レイと二人で力を込めると、ゴゴ……という鈍い音とともに、石の扉はゆっくりと開いていった。

地下への暗闇が、私たちを迎え入れるように口を開けた。

一歩、足を踏み入れると、外の光が遠ざかっていく。

何かが、待っている気がした。

第一の間——封印の試練

遺跡の内部はひんやりと冷えていた。湿った石の匂い。床には、古い時代の模様が刻まれている。

レイが静かに呟いた。

「……やっぱり、ここも封印が緩んでる。」

奥へ進むと、壁に埋め込まれた古びた石灯りが、ぼんやりと光を放っていた。

「灯の精霊……?」

「完全には消えてないみたい。」

私はお出かけセットの袋をぎゅっと握りしめる。

そして、その時だった。

——シュゥゥ……。

どこからか、風の音が聞こえた。

「キカ、止まって!」

レイが鋭く言う。

次の瞬間、足元の石がカチリと音を立てた。

ガガガガ——ン!

突然、部屋の入り口が石の壁で塞がれる。

「しまった……!」

「罠……?」

だが、ただの罠ではなかった。

空気が歪んでいく。

「風の……精霊?」

風が集まり、渦を巻く。

だが、これは……違う。

普通の精霊じゃない。何かが混ざっている。

壁の模様が、うっすらと光り始める。

「これは……」

「そうみたい。でも……妙ね。」

私は胸に手を当てる。

お出かけセットの袋の奥で、布切れがわずかに震えていた。

まるで、何かを感じ取っているように——。

——ゴゴゴ……

封印の間の空気が震えた。

何かが、目覚める。

石壁の模様が光を帯び、浮き彫りの文字が淡く揺らめく。その光が渦を巻き、やがて一つの形を作り出した。

霧のような風が絡み合い、ゆらゆらと揺れる灯の光が混ざっていく。

そして、それは「姿」を持ち始めた。

遺跡の異形

——ズルッ、ズルズル……。

目の前で、形の定まらない何かが蠢いていた。

風の精霊のようにも見える。だが、その輪郭は異様だった。

「……風の精霊、じゃない?」

レイが小さく呟く。

私も息を呑む。

風を纏っているが、どこか……不安定だ。炎のようにゆらめく部分があり、それがかすかに光を放っている。まるで、灯の精霊の性質が混ざってしまったかのように。

「……キカ、下がって。」

レイが静かに言う。

その瞬間——

——ヒュオォォ……!

それは一気に形を変えた。

空気の中に「何か」が生まれたような感覚。

見えない爪が風を裂く。

「——っ!」

私は慌てて身を翻す。

ザシュッ!

床の石が抉れた。見えない爪が確かにそこを引き裂いたのだ。

レイが呪文を唱える。

「燈(ひ)よ、導け——!」

彼女の指先から、小さな光の粒が散る。

その光が遺跡の壁画を照らすと——

「……!?」

異形の影が、壁に映し出された。

人間の形をしていない。

だが、風と炎の精霊のような……けれど、どちらでもない。

レイが言った。

「……封印が崩れたことで、精霊が変質した?」

「でも、さっきのやつとは違う……!」

私たちがこれまで見てきた精霊は、確かに異形ではあった。だが、今目の前にいるこれは「まるで違う」。

見えているのに、見えないような錯覚を起こす。

音がなく、影だけが揺れる。

「……逃げる?」

「無理。扉は閉じたまま。」

後ろを振り向くと、石の壁がしっかりと塞がっていた。

「戦うしかない……!」

戦闘:遺跡の異形

レイが両手を広げると、光の粒が舞い上がる。

「灯の光なら、この空間を照らせる——!」

彼女の術が発動すると、壁画の光が増した。

その瞬間、異形の動きが止まる。

「——効いてる!?」

私は息を詰めた。

だが、それは一瞬だった。

異形が動く。

影が伸び、壁に映る光の形が歪む。

そして——

「ッ!」

私の足元の影が伸び、絡みつくように迫ってきた。

「キカ!」

レイが手を伸ばす。

私はとっさに腰の袋を握った。

そして、その中にしまっていた「布切れ」に指が触れた瞬間——

——スッ……。

何かが、ほどけた気がした。

異形が一瞬、動きを止めた。

「……?」

だが、それも束の間。

「キカ、こっち!」

レイが手を引く。

私は布切れを押し込むと、一緒に壁際へと駆け込んだ。

その瞬間、遺跡の奥へ続く道が開けた。

「今のうちに——!」

私たちは扉を抜け、最奥の間へと駆け込んだ。

真実の壁画

——ドン!

扉が閉まる。

中は静寂だった。

私は大きく息を吐いた。

「……なに、あれ……。」

「分からない。でも、精霊じゃない。」

レイは壁を見上げていた。

そこには、一枚の壁画があった。

——一人の女性が、羽衣を身に纏っている。

「……これって……。」

壁の横に、小さなプレートがあった。

そこには、たった一言——

「命の羽衣」

と刻まれていた。

これが、布切れの本当の姿?

私は目を凝らした。

布の質感、光を受けると透けるような繊細な生地。それが彼女の肩から流れるように広がり、まるで光そのもののように描かれている。

「……まるで、生きているみたい。」

壁画はただの絵のはずなのに、そこに映る羽衣は、今にも風に揺れそうなほどだった。

「でも……これ以上の情報はないわね。」

レイが壁画に手を伸ばしたが、何も起こらなかった。

壁画には何の仕掛けもなく、ただ、そこにあるだけだった。

「……結局、どうやったら布切れが羽衣になるのかは分からないのね。」

「そうみたい……。」

私たちは、しばらくその場に立ち尽くした。

そして——

背後の扉が、再び開く音がした。

何かが、戻ってくる。

私たちは、ゆっくりと振り返った——。

(第8話:「隠された扉」 へ続く)

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