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12/17の破壊者

12月17日。
俺の話なんて一つも頭に入ってないのだろう。
酔っ払った女は、俺に対してブサイクだとか、田舎もんだとか、土臭いやつだとマウントとって、自分は都会で暮らしてましたみたいな雰囲気を醸し出して、勝った気でいる。
そして俺がまだ独身で、この過疎地から一歩も外に出ていない臆病者だと思っているんだ。

その事について、お前は間違えている。
なんで急に帰ってきたんだと、野菜を届けたときに、様子を見に行ったが、とりわけ落ち込んでいるわけでもなく、俺をいじる態度は昔のまま、変に高飛車気取りで、それを取り除こうとすると、酷く脆く弱い。だから、何も言わず距離をおいたが、酒の力は怖い。

笑い上戸と泣き上戸が同時に襲ってくる酒乱ぶりで、並々ならぬ事があって帰ってきた事を教えてくれた。旦那が窃盗事件を起こして逃亡中だとか、ちょっとドラマのようなありえない事件を抱え込んでいた。

酔っ払った勢いで、昔俺のことを好きだったことを告白していたが、今日はもうきっと覚えてもいないだろう。昨晩の、酔った勢いだ。

俺も忘れようと思って、もっと酔えるように、追い酒を何杯か飲んで寝たが……
どうにもこうにもはっきりと覚えているし、俺のベッドで寝ている女は、起きた時どんな反応をするのだろう。

俺もずっとこの過疎地で生活していたわけじゃない。
都会へ行って、仕事もしたし、彼女も出来たし、結婚もしたし、子供もいる。
父親がどうにもこうにも大変だから、帰ってこいと言うから、俺だけ一時的に帰ってきているだけだ。
仕事も順調だし、それなりの富もある。
しばらく都会の仕事を休んでも、生活に支障が出ない程度の富がある。

俺は帰ってきたけれど、酒を飲んでも、皆と同じように愚痴を言うことが出来ない。
俺にはそんな愚痴が一つもないからだ。

そして、この土地に身を固めて、都会の暮らしをやめようと思っている。
妻も子供も呼び寄せるはずだった。

それがついこの間から流行し始めたウィルスのせいで、帰る帰れない帰る帰れないと振り回されているに過ぎない。
いや、もしかしたら妻も子供も、こんな田舎には来たくないのかもしれないし、姑問題が影を潜めているから、こっちに身を固めてという俺の話になんて耳をかさないのかもしれない。

そんな状態で、この女はこんな田舎に傷を負って帰ってきた。
俺の人生は楽しいのかだって?
昨晩は久しぶりに楽しかったよ。

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