
『風鬼の金棒と精霊の金塊』:第1話『風と追跡』(協力:ChatGPT)
第1話『風と追跡』
「おい、それ——!」
振り向くことなく、俺は風のように駆けた。
背後の女性の声は、どこか遠くに吸い込まれていく。耳に届くはずなのに、まるで異なる世界から響いているようだった。
——あの黒い裂け目。
目の前に広がる風の大地。空に浮かぶ奇妙な都市。
俺はどこにいる? そもそも、なぜここに?
それを考える余裕もなく、俺はただ足を動かした。この袋——訳の分からない布の束を抱えて。
風の大地
足元の大地はざらついている。岩と草が入り混じり、風が容赦なく吹きつける。俺の腕の中にある袋は、思ったより重く、それなのに妙に温かい。
何の変哲もない布の束——そう思いたかった。
だが、持っていると奇妙な感覚がした。まるで空気が静まるような、あるいは……精霊の気配が遠ざかるような。
風の精霊が、少しだけ大人しくなる。
それを理解したのは偶然だった。俺がこの袋を掴んだ瞬間、それまで周囲を渦巻いていた風がぴたりと鎮まったのだ。
あの女性がどんな存在かは知らない。ただ、この袋が精霊と何か関係があることは確かだった。
「なら、俺が持つべきだろう。」
風の精霊が暴走している。俺はそれを抑える必要がある。
迫る影
ふと、背後に気配を感じた。
追ってくる——あの女性だ。
振り向くまでもない。足音が風に紛れ、俺の背中を突き刺してくる。彼女は必死だった。俺がこれを持っていることが、相当気に入らないらしい。
「返せ!」
かすかに聞こえた。
俺は無言で加速した。
ここでは風がすべてを支配する。俺の足元には、風が生み出す上昇気流が渦巻いている。
跳んだ。
風を掴み、地面を蹴り、身体を宙に投げ出す。
次の瞬間、俺は空へと駆け出していた。
——そして、空中都市「ハリウ」が目の前に広がる。
(第2話『空中都市の暴走』へ続く)
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