12/10の破壊者
12月10日。
私は言われるがままに、警察の目を盗み、彼の家へ忍び込んだ。
まるで空き巣。
庭先の窓を破壊することもなく、彼がくれた鍵で裏の勝手口を開ける。
物音をできるだけ立てずに、静かに静かにと周りに注意しながら、バッグに詰め込めるだけ詰め込んでゆく。
昨日に引き続き2日目。
机の上に乗っていた離婚届は、昨日彼に渡した。
でも、あれを提出しに行ったら、足がついて捕まっちゃうかもしれない。
私が変わりにとも思ったけど、私の家が隠れ家だから、私も身元がバレると捕まっちゃうだろうし、もうほぼほぼ共犯みたいな感じだから、誰かに助けを求めることの出来ないんじゃないかと、彼の言いなりになってしまっている。
それでも、もう元の生活に戻りたいという気分も無くなっていた。
やけくそだった。
生活も何をやっても上手く行かないし、お金もない。
明日の食べ物すらどうしたら良いのか分からない状態で、彼の家にあるものをリサイクルショップに売りつけて、なんとか小銭を手元に入れるのが精一杯な生活を余儀なくされている。
職場にも、もう戻れない。
怖くて誰にも顔を見せることができない。
できれば今の住んでいる場所も移動して、別の場所に住みたい。
彼の家にこのまま住めればいいのに、でも、警察が周りをウロウロしているのを見かける。
彼は警察に追われていて、この家に帰ってくるのを、待っているんだ。
そう思うと、もうこの家には帰ってこれないのだろう。
名前も偽って、どこか遠くに行ければいいのに、とりあえず手元資金だけでも、電車に乗るお金だけでも手に入れば、一ヶ月分の家賃だけでも手に入れば、そう思いながら彼の家にあるものを、バッグに詰め込んでゆく。
ちょっとまって、このまま、バッグごと持ち逃げして、私一人分なら……
そうだ。私一人分なら、どこか別の場所でやり直せるのかもしれない。
彼には申し訳ないけど、このまま逃亡してしまおう。
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