見出し画像

蟻とガウディのアパート 第23話(第二章)

「歌い手」

 マヌエルは、自分の心が裸になるまで歌い続けた。
 着ているものが邪魔になって、シャツを破る。
 見えないうちに、皮膚も剥がす。
 そこに現れた赤い肌、チリチリと焦げるような痛みがマヌエルの歌だ。

 ある歌手は、喉元のあたりが火傷するような痛みを歌い、
 またある歌手は自らの内蔵をつかんで捻り、
 そこから滲み出たひと筋の黒い涙を歌う。

いいなと思ったら応援しよう!