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いえない

携帯越しに鈴の音で目が覚める。
小学生のときに親に買ってもらったという
シンプルな目覚まし時計だ。

もう何回鳴ったら一旦止まるかも
覚えちゃった。中々起きないだもん。

また「おやすみ」が言えなかった。
何度言えるか分からないのに。

こんなことばかりしているから
あなたが頭から離れないんだよ。

写真からあなたの部屋の香りがするんだ。
大きめのベッドのふわふわした香り。
泣いてばっかりだよ毎日。

《1年は忘れられないかもしれないけど
3年も経てば思い出せなくなる。》
浮ついた心を持っていたあなたがくれた言葉を
治らない傷にすり潰して塗りたくるような。
そんな毎日だよ。

窓から聞こえる祭りの喧騒を
今年は1人で味わおう。


っていう。
そんな夢ばかり見ていた。

携帯越しに線路の音で目が覚める。
優しい寝息(たまにいびき)と
鳥の歌声が聞こえる。

久々に素敵な夢を見た。

ふわふわして、へなへなして、くねくねした夢。

にこにこしながら身体を起こせた夢。

「おやすみ」が言えた。今度は
「おはよう」が言えるといい。

なんだ、思ったより、世界は言える。
思ったより癒える。幸せだ。とても。

ありがとう。

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