井川意高【熔ける】読書感想
当時世間を賑わせた大王製紙会長による資金私的流用事件を本人が振り返った本作品。当時毎日のように報道されていた事件だったので、非常に事件概要に興味があった。
この事件以外でも感じる事ですが、ワイドショーや週刊誌などによる事件の報道と事実にはかなりの開きがあるんだなと。
当時報道されたいた井川意高氏の人物像は、幼少期から資産家の家に生まれ、甘やかされ育てられ、創業家の直系として苦労する事なく社長、会長へと就任していった。そして、毎晩のように夜の街で飲み遊び歩き、女優などとの噂も度々あった。学生時代からギャンブルに高じ、今回の事件も必然だった。そんな報道をされていたのを記憶している。
当時の私は、この報道を見て何となく興味を失ったのを覚えている。
つまらいなドラマや映画に出てくる、出来損ないの二世経営者の暴走だったんだなと。次第に事件への興味を失っていき、報道を目にする事もなくなっていった。
先日、動画サイトを流し見していた際に、井川意高氏が著名人と対談している動画がおすすめ動画に表示された。
おっ⁉ と思い、当時の記憶が蘇った私はその動画を視聴してみた。
バカな二世元経営者が当時の金持ち談話をするものと思って見てみた動画でしたが、私の描いていた井川意高氏の人物像とは全く違う人間が、物静かに対談を進めていた。
すごく、落ち着いて話す井川氏を見て、再度当時の事件への興味が沸き上がってきた私は、【熔ける】を購入した。
会社経営の大きな重圧と、ギャンブルの怖さを大きく感じ、自分の周りの経営者を見る角度が変化した。そして、今自分の周りに存在するギャンブルについても考える機会になった。
あまりにも冷静に当時を振り返っているので、少し拍子抜けしたが、得てして事実ってのはこんな感じなんだろうな。劇的な話を期待していたが、真実はドラマや映画、小説などに描かれるものとは一線を画し、よりリアルで怖さを感じました。
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