立つ鳥が跡を濁さないのなら、ヤニカスも跡を濁してはいけない。
私は喫煙者。そこまでパカパカ吸うわけではない。週に2箱も吸えば多い方である。外でもあまり吸わない。しかし、更にクリーンになろうとしてる現代社会においては、肩身の狭い思いをしている。喫煙所などまるで無い。
たまに外で吸いたくなったら探すのは、パチンコ屋か飲食店だ。言わずもがなパチンコ屋は喫煙所を内包している。最近は喫煙スペースでしか吸えない所も多いが、あるにはあるので利用している。打ちはしないが。
飲食店は、店の前に灰皿を用意してくれている所だけだ。あれはかなりありがたい。ゲームであれば、瀕死の状態でセーブポイントを見つけたときのような気分になる。吸う気が無くても吸ってしまうときもある。まぁ現実は煙草を吸うことで瀕死に近づいているのだが。
しかし店が営業中だと遠慮する。食ってもないのに灰皿だけ利用するのは気が引けるからだ。だから、休業中にも灰皿を置いてくれている飲食店には頭が下がる。無人販売所みたいな賽銭箱を併設しておいてくれたら、幾らか入れてしまうだろう。それくらい嬉しい。
そして、そろそろ私が誰かの役に立っている話でもしようと思う。結論から言うと、私は世の中の喫煙者の役に立っていると思う。理由は以下だ。
私は実は携帯灰皿を携行している。前半であれだけ喫煙スペースが少ないことを嘆いたにも関わらず、実はそれなりにどこでも吸っている。勿論人けが少ない場所を選んではいる。そして残念ながら、そんな人けが少ない場所には吸殻が落ちている。どうしても我慢が出来なくなった喫煙者の粗相が落ちている。
例えばコンビニの前。最近のコンビニは灰皿が無いことも多いので、結構吸殻が落ちている。良くない。他には、大きめの駐車場。周りの視線を車が隠してくれるので丁度良いのだろう。気持ちはわかる。しかし、自分の粗相を放置して去るのは良くない。
そして私はそんな粗相を拾っている。私が吸っているときに、見つけたら程度ではあるが。幸い携帯灰皿を持っているので、気づいたら拾うようにしている。あんまりに多いと諦めるが、3,4本程度なら拾って帰る。吸殻を拾うなんて汚いとお思いだろう?実際、確かに汚い。どこぞの誰が吸ったか分からない吸殻など、汚くて拾いたくない。
しかし私は気づいたら拾うようにしている。何故か。それは喫煙者の地位向上のためである。道に落ちている吸殻というのは、見ていて気持ちの良いものではない。喫煙者が見てもそう思うのだから、非喫煙者が見たらもっと思うだろう。そしてそんな道に落ちた吸殻のイメージが、喫煙者の姿と重なる。そうなるとどんどん喫煙者へのイメージは悪くなる。良くない。
マナーの悪い喫煙者は学ぶべきなのだ。喫煙所を探しながら、「吸うとこねぇ〜」なんてヤニを吹かしながら吸殻をポイ捨てする。そうなると、余計煙草に対する取り締まりが厳しくなる。そして少ない街中の灰皿が更に少なくなる。現代の灰皿は、まるで乱獲によって絶滅に近づく動物のようだ。
私は街で煙草を吸いたい。あの地から生える銀のJTの灰皿周辺で吸っているときのような、世間に許されている気分をもっと味わいたい。逆に言えば、灰皿の無いコンビニ前や駐車場で吸っているときに感じる後ろめたさを極力感じたくない。私はそんな喫煙者のイメージ向上の一助になればと、せっせと喫煙者の粗相を拾っている。これが本当に喫煙者の為になったかどうかは証明されないだろうが、少なくとも私が一服した後には吸殻は落ちていない。そして落ちた吸殻を見る人も居ない。これからも私は喫煙者の地位向上のためにヤニカスの粗相を拾い続ける。立つ鳥が跡を濁さないのなら、ヤニカスも跡を濁してはいけない。