《鬼の旅8》 いよいよヌナタマヒメの元へ
この二日間は地元の人でも驚く
大雪に見舞われた
幸い、宿泊先から徒歩圏内だったので
*ヌナタマヒメもいらっしゃる天津神社へ
(*本書では敢えてこう表記する、以下同)
参道のみ雪かきしてくれているおかげで
何とか参拝できた
まずは本殿にご挨拶、瓊瓊杵尊より
「よう、参られた。
ヌナタマヒメが奥で待っておる」
と告げられる。
奥にはどうやったらいけるのだろう?
右側に奥につづく道があったので行ってみる。
すると「子聖大明神」の文字
調べてみるとこちらが
大己貴命(大国主)であった
その場から左奥に社殿が見えるのだが
参拝できるルートが見当たらない。
一旦、本殿まで戻る。
すると左にも奥に行けそうな階段を発見した。
こちらにいらっしゃるのだろうと
思われる社殿へは道がなく…
雪が深いためか、元からなのか
石段は竹で通行止めとなっていた。
カタチ的にもやはり封印されていた…
いよいよ解放の儀へ
意識を集中すると、地中の深く暗いところに
蹲っているヌナタマヒメの姿が。
まるで翡翠の原石のように
ゴツゴツした表面で、それ以上
傷つかないように、傷つけられないよう
硬く閉ざしていた。
翡翠、本来の美しさからは程遠かった…
「わたしが話を聴きます」
リンクする歌をうたうと
少し緩んだのがわかった。
「わたしは貴女の本当の美しさを
知っています。
貴女がこんなものなければよかったと、
身を投げ捨てることで封印した翡翠は
今も多くの人に愛されています。
だから、どうかそんなに美しいものを、
そしてそれを生み出した貴女自身を
これ以上責めないでください。
罰しないでください。
貴女は美しいのです。
とても美しいのです。
だからどうか、自分の存在が罪だなんて
言わないでください。
わたしは貴女が本当に美しいことを
知っています。
翡翠ではなく、貴女自身が美しいことー」
語りかけながら
わたしの頬に涙が伝う
「・・・」
ヌナタマヒメがなにか言葉を発しようとした
「・・・」
「其方はわたしが美しいというのか?
其方は…
翡翠ではなく、わたし自身を…
見てくれているのか?」
言葉につまりながら、そして驚いた様子で
ヌナタマヒメが聞き返した。
「はい。
わたしは貴女自神を見ています。
貴女という存在そのものを見ています。
感じています。
翡翠というものを通してではなく
貴女そのものを」
わたしははっきりと伝えた。
まっすぐ伝えた。
「そんなことを言ってくれたのは
其方がはじめてだ…。
わたしはいつでも
翡翠というものを通してしか
見られてこなかったからな…」
少し嬉しそうに
そして悲しげに言葉を発した。
癒しと許しと解放の音を奏でながら、
その後も対話を続けた。
自分の存在に必ずつきまとう「翡翠」
それがいつしか陰となり纏わりつき、
呪縛と化した
あんなに美しい翡翠を
生み出しておきながら
自ら生まれ出たものを
嫌い、憎み、閉じ込めたー
「貴女が生み出した翡翠が
あんなにも美しいのは
貴女自身が美しいからです。
美が宿るものからしか
美は生まれないからです。
だから、自分から出た美を
封印するのはもうやめてください。
確かに、あまりに美しいその光に
人々(神々)の目が眩んで
しまったかもしれない。
だからと言って、貴女がその光を
閉じ込めなくてよいのです。
光が強ければ強いほど
寄せつけなくなるものー
だからこそ、自分を閉じ込めるのではなく
存分に光輝き、この世界を
照らしてほしいのです。
貴女の声に、耳を傾け始めている人もいます。
わたしもそうだし、海巫女もそうです。
だから、今日ここへ来ました。
どうか、本来の美しい姿を見せてください。
出てきてください。」
ヌナタマヒメの御姿
再び、音を奏でながら解放と浄化を続ける。
途中、苦しくなったが
立て直し、続けること数分ー
大雪で光なんてないはずなのに、
辺り一面がやさしく温かい光に包まれていく
そして、ついに姿を現したー
それはそれは美しい、御姿であった
絶世の美女、とでも言おうか
まさに女神そのもの
「ありがとう。」
そう言って、ヌナタマヒメに抱きしめられた。
その光が本当に美しくて…
後に、あれ?どこかで見た記憶が…
と思ったら今回の旅で必要なため、
作成した画像であった
この光、まさにヌナタマヒメそのもの
そして、ヌナタマヒメが姿を現すときに
出てきたメロディが
「豊玉姫」にも通ずる歌だったのだ。
音を紡ぎながら、なぜこのメロディ?
と思っていたら
「わたしはトヨタマヒメ」
と・・・
ヌナタマヒメ
豊かな玉=翡翠を生み出す姫
そして、これから番と出逢い
新たに誕生させるのだ、と
そして、今回ヌナタマヒメが
本来の姿を取り戻したことをきっかけに
多くの女性が男性に対して抱えている
鬼の感情の解放が次々と起こっていく。
本来の姿となったときに番と出逢える。
「それは、弓月、あなたもよ。」
と
最後に、大国主命について
思うことはないのか聴いてみた。
「もちろん、わたし自身を
見てもらえなかったことは
本当につらかったし、悲しかった。
でも、それは今、貴女が解いてくれた。
だから、もう彼に対しての
怒りも執着もない。
ただ…
人は光(自分を照らしてくれるもの)を
強く求めている。
本当は自分の内に光があるのに
それに気づかず、気づこうともせず
外に外にと求め、目の前にある
大切なものを失う。
もう、あるのに…
でも、わたしは今日、
自分の光を取り戻した。」
ヌナタマヒメは
優しくそして力強く微笑んだ。
大国主命はどう思っているのか?
気になったので聴いてみた。
「わたしは権力を追い求めるあまり、
目の前の大切なものを見ていなかった。
きっと、彼女(ヌナタマヒメ)の言葉を
もっと聴けば
彼女自身をもっと見ていれば
追いつめなくても
自ずと答えはわかったのだと思う。
そうして、わたしは光を外に求め続け、
自ら破滅した。
さらに、彼女の命まで奪ってしまった…」
まるで、拗れた男性性優位の社会を
象徴しているかのような内容であった。
それでも、大国主命がいなければ
この国はここまで発展してこなかったし
今の日本国があるのは
大国主命のおかげであるのは
変わらない事実ー
そのことを伝え、そして大国主命にも
自分を責めることのないようお願いした。
彼も彼で、きっと必死だったのであろう。
権力や美しい女性を娶ること
=自分の強さであり
そうして力を誇示することで
己の命を守っていたのであろう。
…
大国主命については、隠された部分が多く
とても闇が深いことに気づいたのは
この後の話であるー
この地が解放されたことは
大きな足がかりとなるだろう
つづく