米国「暗号資産規制」の裏にも「大きな政府vs.小さな政府」
新潮フォーサイトに寄稿しました。
米証券取引委員会(SEC)が暗号資産取引所大手のバイナンスとコインベースを立て続けに提訴しました。
昨年のFTX破綻で一気に焦点となったように見える暗号資産規制ですが、実はSECと米商品先物取引委員会(CFTC)の間で長年にわたり縄張り争いが続いています。
背後に潜む民主党と共和党のイデオロギー闘争が事態の複雑化に拍車をかける。そしてそのせめぎ合いの本丸は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)になるでしょう。
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米暗号資産業界の危機が続いています。2022年には価値の暴落を皮切りに、暗号資産取引所FTXが百数十億ドル顧客資金を分別管理せずに流用の末、11月に経営が破綻。6月末現在で説明できない87億ドル(約12兆5545億円)の不足が生じていることが明らかになっています。FTXを率いていた時代の寵児であるサム・バンクマンフリード氏は、詐欺・資金洗浄などの罪で起訴されました。
これらの余波で、他の暗号資産業者が米地域銀行のシグネチャー・バンクとシルバーゲート銀行に預けていた巨額の預金の多くが引き出され、両行は2023年3月に清算されました。銀行破綻の直接的な原因ではなかったものの、暗号資産が米国の金融システムや実体経済に及ぼすトリガー的な影響力が、潜在的に重大であることが示されたと言えましょう。
こうして「アブない私鋳銭」のイメージがついてしまった暗号資産ですが、本稿では、①潜在的に巨大な市場である暗号資産の新たな規制利権をめぐる官庁間の縄張り争い、②規制の強弱をめぐる民主党と共和党の見解の相違、③暗号資産と潜在的な競合関係にある中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行準備で対立する両党のイデオロギー闘争から、米当局の動きの政治的な背景を読み解きます。
ご一読ください。