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大切なものをつくること、失うこと
彼は大切なものをつくるのが怖いと言った。
失うのが怖いから、当分立ち直れないと。
わたしが失ってしまったものの話をしたら、
涙する人がいた。
苦しい、と。
それでも彼は大切なものを作り続けているようだった。
失うことの苦しさを知っていながら。
こないだ、わたしの長い相棒だった水筒が割れた。
その水筒は友人のお薦めで購入した、黄緑色の透明のボトル、お気に入りの色のやつ。
色んな国に連れて行ったし、色んな人と対面した水筒。
その黄緑はもうただの水筒じゃなくて、思い出まで乗っかっていたのだから、割れたのは確かに悲しかったな。
いつからか、わたしのおばあちゃんは、わたしのことを忘れてしまった。
別の人と勘違いするものだから、最初はほんとうに訳が分からなくてただ悲しかった。
悲しかったのだけど、今はおばあちゃんが可愛いのです。
おばあちゃんにはね、何もない机の上に何かが見えるみたい。時々何かに向かって指をさしてはぶつぶつ喋るんだ。
施設の一階のベンチに一緒に座ってたらね、「下の階の太った女の子がね、、、」なんて真顔で話し始めたんだけど、下に階なんてないんです。
おばあちゃんには何が見えてるのかなぁ、
おばあちゃんの頭の中はどんな世界なのかなぁ?
想像したらちょっと愉快です。
とても好きだった恋人に別れを告げられた時、
凍えてしまいそうなくらい身体の芯が冷えて
一晩中眠れなかった。
悲しかったなぁ。
今では、いい友だちなんですけれどね!
確かに失うのは悲しいです。
それでもわたしは自分にとってのお気に入りやとっておきのモノが欲しいし、自分にとってのかけがえのない存在をつくりたいです、忘れたくない思い出も沢山。
変わってしまった時、その時いちばんいい関係で繋いでいきたいって思ってる。
失うということを後戻りできない悲しみと捉えるんじゃなくて、連続する変化のように感じてるのかもしれないです。
失うのが怖いから大切なものをつくるのが怖い、という言葉を聞いた時、わたしはそんな風に考えたこともなくて、じゃあわたしはどうなんだろう?と思ってこれを書きました。
近くに存在するひとでもそのひとの考えは分かり切らなくて、たまには答え合わせして、自分と違うということがなんだか愛おしい、人間だなぁと思います。