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10月19日、"ソプラニスタ"、デ・サに驚かされた!そのガチなソプラノに圧倒された!

"ソプラニスタ"、ブルーノ・デ・サが、フランチェスコ・コルティの指揮、イル・ポモ・ドーロの伴奏で、女性が舞台に立てなかった、18世紀、ローマにおける女形(?)に注目するアリア集、"Roma Travestita"。

1587年、ローマ教皇、シクストゥス5世(在位 : 1585-90)は、教皇領内で女性が舞台に立つことを禁じる(プライヴェートな上演は見逃されていた... )。ローマ教会の総本山が支配する地だけに、何かと節制が求められる状況がありました。そうして迎える17世紀、ローマでも新たな総合芸術、オペラが上演されるようになり、やがて一大中心地に!盛り上がるオペラ熱の一方で、女声無しという不文律をどう乗り越えるか?そこで活躍したのが、カストラートたち... に、スポットを当てる、"Roma Travestita"。

ナポリの宮廷楽長を務めた巨匠、アレッサンドロ・スカルラッティ(1660-1725)、最後のオペラ、『グリゼルダ』(1721)に始まって、ナポリ楽派、前期のエース、ヴィンチ(1690-1730)に、ヴェネツィアの鬼才、ヴィヴァルディ(1678-1741)、ヴェネツィア楽派、最後の輝き、ガルッピ(1706-85)、さらに知られざる作曲家たちが続いて、パリでグルックと競ったナポリ楽派の大家、ピッチンニ(1728-1800)の『チェッキーナ』(1760)まで、ローマの舞台でカストラートたちが歌った女性役、全13曲のアリア。

"Roma Travestita"は、カストラートによる女性役の貴重な記録であると同時に、ローマにおけるバロックからポスト・バロックへのオペラの歩みを捉えていて、いろいろ制約(女性が舞台に立つこと禁止... のみならず、オペラの上演そのものが禁止されたことも!)がありながらも、ローマのオペラ・シーンの盛り上がりを活き活きと聴かせてくれる。何たって、18世紀の作曲家のオール・スターが終結!さすが、ローマなのである。

一方で、初めて聴く作曲家たちの興味深さ!ローマをベースに活躍したリナルド・ダ・カプア(ca.1705-80)、ペルゴレージの学友だったというアレーナ(1713-84)、ヘンデル亡き後のロンドンで活躍したコッキ(ca.1715-96)、ナポリの宮廷楽長も務めたコンフォルト(1718-93)、スペイン出身でナポリに留学したガルシア・ファヘ(1703-1809)... このあたりに、当時のローマのオペラ・シーンのリアルを垣間見る気がする。いや、多彩!

しかし、何と言っても、デ・サの驚異の歌声!その高音の半端無さたるや!"ソプラニスタ"って、なかなか難しいよね... というのが、これまでの正直な感想だったけど、ヤツは本物だわ。線の細さ、気になるところ、なくはないけれど、男性がソプラノの音域を捉えて生まれる独特さ... 常識を突き抜けた先の表現は、まさしく浮世離れしていて、愉悦すらある。この越境感が、かつてのオペラの醍醐味だったかと、感慨...

そして、フランチェスコ・コルティの指揮、イル・ポモ・ドーロが、また、盛り上げる!彼らならではの息衝くパフォーマンスが、18世紀当時の劇場に立ち込めたろうワクワクする雰囲気、呼び覚まし、歌ばかりでなく、聴く者を惹きこんでくる!いや、この臨場感がたまらない... デ・サの歌声も合わせて、かつてのオペラのスリリングさ、追体験するよう。しかし、追体験できてしまうのが、凄い。

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