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私はパン屋を探している

そろそろ仕事を探そうか、と思う時、必ず考えることがある。

ひとつは、以前書いた「朝起きた瞬間につらいと思わなさそうな仕事がいい」ということ。
そしてもうひとつが、前職でもう顔も見たくなかった人たちが今の私を知った時、あぁそんな方向にいったんだ、こういう生活はやめたんだな、と思われそうな仕事であること、だ。
正直に言えば、羨ましいと思わせたい、くらいに思っている。


他人軸、と引かれそうだけどもちろんそのためだけじゃなくて、本当に心が向く方に歩いていけたら、自然とそうなるはずなのだ。あの人はそういう生き方を選んだのだと思わせたい。正直、なんでこんなに苦しめられなければならなかったのかと、今でも思っているから。

彼女らも、その仕事や生活が嫌で、ストレスでパンパンになっているのが透けて見えていた。それでもここにいるしかない、という気持ちも。毎日不機嫌だったり、嫌味しか言わなかったり、性格もそれぞれだった。

私もストレスまみれのくせに辞められない人だったので、派遣の誰か(特に年上の人)が数年でスパッと辞めるのを見るたび、かっこいいなぁと思っていた。

1年以上続く派遣のほうが少なくて、気づいたら消えている人が多数。ここで数年働けたのならある程度居心地がよかったかもしれないし、自分にできる仕事だから続いていたはず。少なくとも私が見送ってきた人達は、そつなく仕事をこなせるタイプで、周囲から好かれていて、どこにいってもやっていけそうな人が多かった。
そして私は、ガチガチに凝り固まった心で、身軽な彼女たちを指をくわえて眺めているだけだった。


その前に働いていた会社で、そんなに変な人ではなかったのだけど、ちょっと嫌われていた女性がいた。彼女はそこを辞めたあと会社近くのパン屋でバイトしていたらしく、それを見た人たちが「憑き物がとれたみたい」「別人みたい」と話しているのを聞いた。

私は鈍感なのか、単に関わりが全然なかったせいか、彼女の何がそこまでいけなかったのかよくわからなかったけれど、雰囲気的にはたしかにお堅い事務よりも接客をやっていそうなタイプで、単にここは合わなかったのかな、と思った。

そして、自分とちがう雰囲気や価値観の職場に身を置くと心が閉じてしまうということを、そのあと私も経験した。自分のなかの水分が全部腐っていくように感じて、私も私にとってのパン屋を早くみつけたい、と思うようになった。


先月、郵送で失業給付の申請をしたハローワークから、給付期間が2ヶ月延長されます、と連絡があった。おそらく緊急事態宣言のせいだろう。
派遣切りなのに会社都合にならなくて、悔しくてだいぶ泣いたので、2ヶ月延長されたことでお金に関するモヤモヤはほぼ消えた。


契約終了メンバーに選ばれたのは、たぶん体調不良で休むことが多かったから。実際、もうこっちから辞めると言いかけていたくらい限界だった。
気づけば新人教育メンバーで、他部署のベテラン社員さん達のミスも全部訂正して、それでも後から(売り手市場の時に)入ってきた人と時給は変わらなくて。

頭の中がそんなことでいっぱいだった。いざ終了と言われると、あんなにやってきたのにという思いと、こんな卑屈な自分が大嫌いだという思いで、つぶれてしまいそうだった。

仕事をする目的も完全に見失っていた。
私はミスを見つけすぎてしまう。こんなに事務ミスが許されている職場もはじめてだったが、ストレスが溜まりつつ、自分自身「ここに拘ったところで何になるの?」と思っていた。大事な数字のミスはともかく、どうでもいい社内ルールも多かった。そのルールについて、30分くらい数人で悩んだり、2時間の会議をすることすらある。なのにそれを守れる人が少ないし、他部署では知られてもいない。


自分が生きていくうえで、こんなことにこだわる毎日が何になるのかと、ほとほと嫌気がさしていた。仕事だからと割り切れないし、意味なく人のあら捜しばかりしているような気分になる。
そういうことを3年以上(最終的に6年半)もやっていると、さすがに私の人生これでいいの?と思う。なんか3年前の自分と全然変わってないよね、でも不満だけは増えていってるよね?って。

もっと、いやもうちょっとでいい、感情が動くような仕事で生きていきたいと思った。何か大きなことがしたいとかじゃない。ただ日常で、誰かのささやかな楽しみや、小さな助けになることができればいい。
だから別に、事務職が嫌いなわけでもない。事務でも感情が動いて楽しい職場だってあるだろう。ただ、あそこは私には合わなかったのだ。

書いているだけでも、黒いものがモクモクと見えそうなほど、鬱憤が溜まっていたのを感じる。
派遣切りじゃなくたって、遅かれ早かれ、私は辞めていたのだと思う。



いつまでも湧いてくる過去の苦い気持ちを、今日こそは書いて決別し、雨とともに流したい。
あんな自分に二度と出会わぬよう、パン屋を探すのだ。これからは、心赴くままに。


#日記 #転職活動 #うつ病 #事務職の葛藤 #生き方を考える