百合と武田綾乃という作家について ――「馬鹿者の恋」――
『彼女。百合小説アンソロジー』に収録されている「馬鹿者の恋」を読みました。内容はてきとうにSNSとかで作品名を検索していただければだいたいわかるので、そちらを参照していただければと思います。
「武田綾乃」という作家は、一部では百合作家的な扱いをするファンがいる一方で、また一部では男女の恋愛はきちんと表現するのに同性愛は一線を越えたがらなくて百合的に信用ならん作家と言われていたりします。
この「馬鹿者の恋」は百合小説アンソロジーに収録されている作品ですが、確かにこれが最近の百合漫画だったら評価の声はあまりあがっていなかっただろうと思われる物語であり、作中におけるこの手の「依存」は過去に百合として強く忌み嫌われてきた概念であるように思います。
特に、「馬鹿者の恋」における「司」が「宝塚の男役」と評されていて、それがこの作品においてどういう役割を持たせているのかちょっとよくわかりませんでした。そのあたりが作中に出てくる「依存」というワードに同性愛否定の意図を尚更強く含ませているかのように感じさせます。(実際の意図はわかりませんが、少なくとも私は読んでそう感じました。)
確かに百合というものが恋愛未満を含めるものというのはそうなのですが、ギリギリの表現ばかりされるとさすがに印象が悪いというか、「イヤなのはわかったから、もう少し取り繕いなよ」と思わなくもありません。