「百合」=「女の子同士がキャッハウフフ」のステレオタイプは何故定着したのか。やっぱり『ゆるゆり』なのだろうか。
上記引用には「キャッキャッウフフ」ですが、そのあたりの表現の幅自体に意味はないので、本記事タイトルのように、ここでは筆者主観でより使われている表現と思われる「キャッハウフフ」としておきます。(実際にどっちが多いかはまったく調べていません。)
そもそも、「イチャラブ」自体は異性同性幅広く使われる人気の概念であり、何なら少女同士以外でも比較的人気な創作作品のあり方であります。おそらくは女性同士だと処女好き男性のハーレム願望と混同されて悪く言われるのでしょうが、そこの是非自体に関しては話が広がりすぎるため本記事では論じません。
さて。日頃から百合を愛好されている方でしたら、「百合」=「女の子同士のキャッハウフフ」というイメージは、現状に即するものではない誤ったステレオタイプだということはすぐにわかるかと思います。
例えば、『コミック百合姫』は妙にドロドロしてたり薄暗かったりする漫画がよく載っていて、明るくてライトなイメージには当てにくいでしょう。
もっとも、『コミック百合姫』で連載されている『ゆるゆり』が元凶と言えばそうかもしれません。
元々『ゆるゆり』自体が既存の人気作品のノリをマネた作品なので、『ゆるゆり』にすべてを背負わせるのは酷だとは思います。(ちなみに、既存人気作品をマネすること自体に関しては、筆者は悪だと考えていません。)
検索すると、アニメ監督として有名だった人がアニメの流行を「美少女動物園」と表現したのが2010年代前半あたりらしく(正確な日時はわかりませんでした)、その代表作のひとつが2009年にアニメ放送開始された『けいおん!』のようです。『ゆるゆり』の連載は2008年からとなりますが、2011年からのアニメ化で有名になったため、「百合」と「美少女同士のキャッハウフフ」を決定的に結びつけるタイミングとしては完璧であるようには思います。何よりその手の作品でタイトルに“ゆり”を使っている例は『ゆるゆり』以外にあまり聞きませんし。
この『ゆるゆり』はけっこうな長期連載となっており、ネタの傾向も時代によって変わっている部分もけっこうあります。公式カップリングをきちんと成立させず雰囲気までというところはある程度一貫している感じです。
『ゆるゆり』関連については同性愛描写に人権的問題があるということを以前noteに書きました。
『ゆりゆり』の第2巻を読んだら、同性愛観にあんまり進歩がないように見えるのですが、収録作品の初出時期がよくわからないので言及を控えます。
まあ、最近の『大室家』を見たら、「相変わらずなんだなあ」と思ってしまいましたが。
『ゆるゆり』の連載開始の2008年がどういう時代だったのか検索してもよくわからなかったのですが、『ゆるゆり』の作者の人はSNSなどを見ると、『名探偵コナン』の映画をリピートするようなごくごく一般的な女性オタクの方のようで、今だったら『コミック百合姫』に持ち込むのだろうかということを私は考えたりします。
『ゆるゆり』のヒット以降においても、商業でも男子キャラクターも描く仕事をこなしているので、そこまで百合にこだわっている方でもないのでしょう。(別にそれは悪いことでもなんでもないです。個々人のスタンスの話です。)
『コミック百合姫』といえば、昔はBL漫画家を中心に起用していたみたいなことが言われますが、最近の執筆陣で百合漫画をとにかく描きたい人以外にいるのだろうかということを思います。(いやまあ、別にいないこともないんでしょうが。)百合漫画はジャンルそのものの知名度に対して極めてニッチであり、メジャージャンルと比べるとかなり稼ぎにくいはずです。相当やる気がなければ、不毛な地をわざわざ耕そうとは思わないでしょう。
今なお「百合」=「女の子同士がキャッハウフフ」のステレオタイプが崩れないのは、それだけ実際の百合漫画が読まれていない証左でありましょう。