プログレス・プライド・フラッグについて調べた結果と、『作りたい女と食べたい女』のアンフェアな態度
上記のように、『作りたい女と食べたい女』(以下、『つくたべ』)は「プログレス・プライド・フラッグ」を掲げるイラストを何度も描き下ろししています。
ついでに、別作品のキャラクターでも描いています。
「フラッグは複数あるぞ、どれなんだよ」という方のために、プログレス・プライド・フラッグを描いた画像を探してきました。この上のやつです。なんか複雑になってるこれです、これ。
プログレス・プライド・フラッグはいろいろ検索してもなかなか納得できる答えが見つからなかったので私もけっこう悩んだのですが、チャットAIの力を借りてようやく納得できる答えにたどり着くことができました。本記事ではそれを書いていきます。
なお、本記事は2024年6月8日に書いたものです。また少し経つといろいろと変わっていくことが考えられますので、その点はご注意ください。
プログレス・プライド・フラッグとは何なのか?
かんたんまとめ
元々セクシャルマイノリティの人権運動のための「レインボーフラッグ」を、従来のLGBTだけにとどまらず、より様々な人権を考えていこうとアップデートしていったシンボルデザインです。最初は2018年のデザインになるので、歴史的にはかなり新しいです。
おおきなとくちょう
従来のレインボーに加えて、トランスジェンダーを示す水色・桃色・白色と、黒人(褐色系を含める)を示す黒色・茶色を加えています。
あれ?『つくたべ』のやつと微妙にデザイン違うよ?
はい、2024年に描いているものは違うデザインのものを大きく描いています。『つくたべ』が2024年に採用しているデザインは2021年に考案されたインターセックス・インクルーシブ・プログレス・プライド・フラッグという、プログレス・プライド・フラッグから更にアップデートされたフラッグです。黄色と紫色の円でインター・セックス(生物学的に性別のない性、半陰陽)を表しています。
上記のようにAmazonは黄色と紫色の円が入っていないプログレス・プライド・フラッグを使用していたので、『つくたべ』が使っているインターセックス・インクルーシブ・プログレス・プライド・フラッグは欧米でもそこまで普及していないと思われます。
なんで黒人&褐色系とトランスジェンダーなの?
いわゆるBLMがきっかけで普及したみたいです。もちろん黒人のシンボルマークを入れることに反対意見も少なからずあったそうですが、現状の形で決着しているのだと思われます。
というわけで、有色人種差別にはより連携をとる必要がある、またトランス差別にはいろいろと足りてなかったということで、プログレス・プライド・フラッグが生まれたということになっているようです。
結局誰が決めてるの?
どうやらこのあたりは中央集権的に決まるわけではなく、様々な人が「自分はこうしたほうがいいと思う!」と言い合い続けて、自然と大勢が決まっていく感じのようです。そのせいか、同じフラッグの意味ひとつにしても、ばらつきを感じます。
『つくたべ』はなんでフラッグ2つ使ってるの?
これは絵文字にプログレス・プライド・フラッグが用意されていないため、その代用で使っているようです。
上のこれが日本でもお馴染みのレインボーフラッグ絵文字です。
そして、上の3色がトランスジェンダーフラッグ絵文字です。
で、上のように2つを置いて代用しているみたいです。
ちなみに、トランスジェンダーフラッグに対応していないフォントだと上のように変換されます。
なお、黒人を表すシンボルを一切加えていない理由はよくわかりませんでした。(情報弱者の限界)
プログレス・プライド・フラッグに対する批判意見
プログレス・プライド・フラッグには既に述べた「人種問題を含めるべきではない」という批判以外にも懐疑的な意見があり、上記記事ではけっこう強烈なタイトルで批判しています。
この記事が載っているGay City Newsは元々LGBTのアンチをやっているサイトというわけでもなく、2002年から続いている真面目なLGBTQ+向けメディアだそうで、決して自◯党の人権関連政策をほぼ牛耳っている支持団体みたいなところではないようです。
それではこの批判記事を簡単に紹介していきましょう。なお、2020年の時の記事なので、それ以降に改善された部分があるのかもしれません。最終確認は読者の方自身で行ってください。
【悲報】プログレス・プライド・フラッグ、金儲けだった
(以下、つまみ食い要約)
これまで90以上ものフラッグがデザインされてきたけど、利用料を取ってるのはプログレス・プライド・フラッグだけ
プログレス・プライド・フラッグをプリントしたグッズの売上からデザイナーに使用料を払わなければならない
その価格設定も高いよ、ボッタクリだ
デザイナーは利用料で得た金銭を当事者団体に寄付してるのかどうか公開しなくなっちゃったし、最後に公開した寄付額もめっちゃショボい
こんなセコいことをしなかった先人デザイナー達を愚弄している
そんな…。ウソだと言ってよ…。
【悲報】プログレス・プライド・フラッグ、排他的だった
(続いて、更に以下つまみ食い要約)
レインボーフラッグはすべての人を内包していたのに、プログレス・プライド・フラッグは特定の意味を付けちゃったことで取りこぼしが生まれている
バイセクシュアルの存在はどこへ行った?
ものすごく差別されてるアメリカ先住民も入ってないじゃん
ヘイト対象にどんどんなっていってるアジア太平洋の人たちも入ってないじゃん
レズビアン差別を消しにかかってるのもバレバレだぞ
おまけに最も認知されているレズビアン・プライド・フラッグの5色のうちの4色が消えてるのはなんでだよ
最後の「最も認知されている」と言うレズビアン・プライド・フラッグはよくわかりませんでした。批判記事のライターによると、上記のフラッグが最も広まっている…ということなんでしょうか。
東京レインボープライド公式オンラインストアにはレズビアンフラッグが上記の7色旗だけ販売されているのですが、Wikipediaによると5色のレズビアンフラッグは7色を簡略化した派生デザインみたいで、あちらでは5色デザインのほうが人気なのかもしれません。まあ、確かに色が近い7色では印刷が難しそうですし。
脱線になりますが、ここで挙げたレズビアンフラッグより前は、ピンクレズビアンフラッグというのが主に使われていたそうなのですが、「あらゆるジェンダーが内包されていない」ということで、トランス・レズビアン女性やノンバイナリー・レズビアンを意味するオレンジを加えた2018年デザイン版が普及して今に至るということらしいです。
まあ、今でもこっちのピンクデザインを使っても構わないらしいのですが。
プログレス・プライド・フラッグの問題点と『つくたべ』のアンフェアを考える
そういったわけで、数年来不思議に思っていたプログレス・プライド・フラッグの謎がようやく解けてきました。ありがとう、チャットAI。
私が強く感じる問題点は2つです。まず、プログレス・プライド・フラッグにはアジア人差別が除外されてしまっているということです。「黒と茶色は有色人種の意味だからちゃんと入っている」という意見もあるようなのですが、さすがにそれは無茶に感じます。考え方は人それぞれですが、日本人がプログレス・プライド・フラッグを喜んで振るという姿に、グロさを感じずにはいられません。
そして私が強く感じるもう1つの問題点が、女性差別に対する軽視です。上記のGay City Newsに掲載されたプログレス・プライド・フラッグ批判記事の指摘のように、かなりの差別が無かったことにされていると言えてしまうわけなのですが、その中で個人的に強く引っかかるのが女性差別の影の薄さであります。
ただ、こういった点は考え方や視点の違いもあるでしょうし、それでもプログレス・プライド・フラッグを使うのが最善であると考えている人も少なからずいらっしゃるのだと思います。そこは様々な意見があるでしょうから、私も頭から否定するつもりはございません。
しかし、『つくたべ』のやり方となると話は別です。
正確な時期はわかりませんでしたが、『つくたべ』は少なくとも2022年にはプログレス・プライド・フラッグを使い始めています。
多くの日本人はプログレス・プライド・フラッグが何なのかよくわかりません。それは『つくたべ』関係者自身もわかっていたはずです。それだというのに、2年近く一度でもプログレス・プライド・フラッグが何なのか解説したことはあるでしょうか。
読者はプログレス・プライド・フラッグに賛同するかしないかの判断材料を一切渡されないまま、密かに「プログレス・プライド・フラッグは素晴らしい」というイメージだけを“洗脳教育”されてきたのです。作品の売り方の特性上、解説の機会ならいくらでもあったわけですが、何故ずっと触れずにやってきたのでしょうか。
プログレス・プライド・フラッグという歴史の非常に浅いものを早くから知っていた『つくたべ』が、具体的にどういうテーマを持ってデザインされたフラッグなのか把握していないわけがありません。にも関わらず『つくたべ』は、レインボーフラッグとトランスフラッグの2つでプログレス・プライド・フラッグの意味になることも、性的マイノリティだけではなく黒人もテーマにしていることも、一切説明してきませんでした。
私はプログレス・プライド・フラッグがアジア人差別や女性差別を“透明化”しているのではないかという疑問を前から抱いてきましたが、実際にそういう指摘は、多くの人からではないにしろ、無かったわけではないのです。
もちろん考え方なり思想なりがあるでしょうから、『つくたべ』が「プログレス・プライド・フラッグこそ理想的」と考えるのは否定しません。
しかし、それをまったく情報を渡さないまま知識のない人に植え付けようとするのは非常にアンフェアであり、悪人そのものです。一体どの口が「シスターフッド」だの何だの言うのでしょうか。もっともらしい正義を気取りながら、やっていることは邪悪でしかありません。
KADOKAWAは『つくたべ』を絶版にし、全国の図書館・公共機関から回収して社会的責任を果たすべきだと、以前から私は主張してきました。しかし、現実はより深刻な問題を抱えています。KADOKAWAはこれまでのすべてを検証し、どうしてこのような情報公害を出してしまったのか、自己反省をすべきではないでしょうか。それだけ、『つくたべ』の行ったことはあまりに深刻であるように思います。