*エロティシズムな指
わたしは正直ラブホテルというものが苦手だ
男女のまぐわいの目的だけで設計されたその場所は合理的な場所なのかもしれないけれど
どうも好きになれなかった
ただ、今のこの時間から泊まるといっても
予約しているわけでもないのだから
きっとそうなんだろうと思った
だから
「Sまで」と
Nがタクシーの運転手にホテルの名前を伝えたとき驚きとほっとした
それと同時に
この人はどれだけ遊びなれているのか
そんな人とワタシは今から何をしようとしているのかと
冷静な気持ちが芽生えてきた
彼はタクシーの後部座席で
わたしの手をじっと握り
時折親指でわたしの手の甲をさすってくる
それが何ともいえないくらいエロティシズムだった
この人の指は私のことをどう扱うのだろうかと
さっきの呆れた思いを打ち消していく
たとえ彼が遊び人であったとしても
その彼が選んだ目の前の私は遊ばれる人ではないのだから
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