
Photo by
shinobuwada
犬の手も借りたい
バタバタ バタバタ
ここではいつも猫ばかりが呼ばれます
猫の手も借りたいと
ひっきりなしなのです
パタパタ パタパタ
ここではいつも犬は暇そうです
犬の手も借りたいと
誰も言わないのでシッポで遊びます
なぜでしょう
犬だって手を貸せます
かけっこだって得意です
なんなら 救助だってできちゃいます
むしろ 猫よりも手は大きいです
犬だってやるときゃあやります
シッポも目一杯ふります
顔だって目一杯なめまわせます
それなのに
誰も犬の手も借りたいとは言ってくれません
犬はだんだんと寂しくなりました
犬は悩みました
悩みすぎて前を見るのを忘れ
毎日棒に当たりました
これじゃあ 犬も歩けば棒に当たるだな
ある日 犬は思いつきました
ここ掘れ ワンワン
そう吠えれば 人が集まると
運良く小判はたくさん出てきましたが
お化けもたくさん出てきてしまいました
たくさん怒られた犬は言いました
犬一代に狸一匹とはこのことか
ついに犬は決めました
捨て犬に握り飯と思いつつ
地道にチラシを配りました
その甲斐あってか
ある日 一人だけですが尋ねてきました
その人は言います
『犬の手も借りたいんだが… 』
『…ワンッ』
犬は一度だけ吠えました
その人はこっちを見て微笑みます
パタパタ パタパタ
犬は目一杯シッポをふりました
老人は歩きながら言いました
『…心配したぞ』