セッション動画作成1年生
動画編集の初心者(おとなだけど1年生)がリモートセッション動画作成に基礎の「キ」も知らずに立ち向かってしまった時の学習記録です。
注:音楽系、映像系、その他エンタメ系の上級生の方は目を細めて読むくらいにしておいてください。
何故、動画作成をすることになったか
生活の一部だった音楽
社会人の音楽仲間と、バンドを組み、年に数度のライブハウスで演奏を楽しんでいた。
ライブ本番までの曲決めやスタジオ練習、ライブ本番でのハプニングや新しい出会いなど、新型コロナの影響で急に断たれてしまった私たち。
プロの演奏家や音楽関係者の方からすれば、私たちの悩みなって小さなもの。
それでも、私たちにとっては音楽は生活の一部だった。
初の試み、オンライン飲み会で「なんかやりたいね」から始まる
ある日、2バンドのメンバーでオンライン飲み会
ライブハウス、今どうしてるのかな、いつになったら再開できるだろう・・・など、話しつつ、既にリモートセッション動画をYouTubeへアップしている仲間もいたこともあって、
「この2バンド合同で、やらない~」
「楽しいのが良いね」
という、気軽なノリが始まりだった。
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どうやってやるの?
ツールって何があるの?
個別録画はいつまでにする?
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メンバーに動画編集が得意な人?・・・いない
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ミュージック&パフォーマンスの動画を作るということ
楽曲は、星野源さんの「恋」にしよう、すぐ決まった。
オリジナルのミュージックビデオを観ると、楽しい感じ。うん、これこれ!
音楽とパフォーマンスの動画のイメージが共有できた!
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しかし、どうやって進めるのか、この段階で、誰もわかっていない。
実際の動画編集はどう進めるのか
作るのは、演奏シーンの映像に加えて動き(ダンス)ありのミュージック&パフォーマンス動画だ。
はたして、初心者集団はどのように作業を進めたのか。
1年生ならではのお困りごとを起点に得られた基礎知識を記録として残すことにする。
音声データのクレンジング
個別に録音してもらった音源について、音割れしていないか、個別音源に雑音はないか、などのチェック、修正をする。そして、複数音源をミックスするため、音量調整をする。
ノイズ除去の必要性は説明不要だろう。音量調整にの順序は、コンプをした後にノーマライズするということらしい。
音声編集というと、ミキシング(トラックダウン)というような、いわゆる音楽的な効果を狙った編集作業をイメージするが、それはデータをクレンジングした後の話(えええ?って思うかもしれないけれど、今回は省略)。
ゲート(ノイズゲート)
ノイズ軽減のために一定レベル以下の音声信号を減衰させる。無演奏部分のノイズパターンを基準にして処理する。
ノーマライズ(音量正規化)
歪まない最大音量を手に入れるように音声データを処理する作業のことで、波形最大値が100%になるように調整する。
コンプ(コンプレッション)(圧縮)
最大音量と最小音量の差を減らす作業のこと(実際には、最も大きな信号を減衰させる)で、波形調整により音圧増減(ゲイン)する。
※録音時に音声信号が0dBを超えクリッピング(つまり、音割れが発生している個所)があるとコンプができないので要注意。
映像データのクレンジング
動画編集ソフトにメンバーが個別に撮った動画ファイルを読み込ませると、異なるフレームレート、異なるフレームサイズの映像素材が集合する可能性がある
まず、編集後動画の基準となるフレームレートやフレームサイズを決め、個別データを調整してから、映像編集の一番のお楽しみ部分、WYSIWYGにて動画クロップ(切り抜き)や各種エフェクト適用作業をするのが良い。
しかし、今回は完成形の動画イメージが曖昧なまま、直接動画編集ソフト上で粗編集を進め、この手順を踏み損ねた。取り込むべきデータの受け渡しも五月雨式で、編集中に個別データの調整を行う必要も出てしまった。
動画編集ソフトには、異素材を編集ツールへ投入すると、自動的にフレームレートの調整やトリミングをする機能があるので、まず、完成イメージを固めてから動画編集ソフト上にデータをまとめて取り込み編集作業を進めるとスムーズに作業ができるのかもしれない(ここの手順は実証されていないため、一部想像)。
フレームレート
1秒間のコマ数(静止画像数)のことで、単位はfps(frames per second)で表す。フレームレートの異なる映像データを合わせたシーケンスではこれを合わせるように調整すると再生動画の動きが滑らかになる。
フレームサイズ(画素数)、フレーム縦横比
フレーム・サイズは動画の大きさ(面積)のことで、大きいほど画質が良い(動画解像度が高い)。フレーム縦横比は、幅と高さの比率を示したもの。仕上がり動画のサイズを意識して決定する。
粗編集
特別な加工をせず、使えそうな動画をシナリオの順番通りにつなぎ合わせる作業のこと。編集者が企画者へ内容確認をする時に使うことも。
WYSIWYG(ウィジウィグ)
What You See Is What You Get(見たままが得られる)、つまり、見たまま編集できること。動画編集ソフトでは映像や画像の編集だけでなく、タイムライン、シーケンス、クリップなどの編集単位も視覚的に編集できる。
動画の公開
動画編集が終わると、いよいよ動画を公開(今回は限定公開)することになるが、インターネット上での動画はできるだけ少ないデータ量で高画質で再現するための圧縮が必要である。今回は圧縮規格H.264/MPEG-4、画質(動画解像度)1080p HD (1920×1080)とした。
動画編集ツールにあらかじめYouTube用の設定などが組み込まれている場合は設定を選択するだけなので、操作自体は難しく無い。
基本的に、ビットレートが高ければ高いほど、画質や音質が向上するが、視聴者側の環境(回線速度やデバイスのスペック)により、必ずしも高品質にならない可能性があるので、技術の普及状況に応じてその時代にあった適切なビットレートを選択することになる。
また、音声データは映像データと比較するとファイルサイズが大幅に小さいため、音声データを非圧縮(リニアPCM)でエンコードする選択肢もある。AAC(Advanced Audio Coding, MPEG-4規格の音声データ)は、MP3(MPEG-1規格)より圧縮率が高い。
ビットレート
1秒間に送受信できるデータ量のこと。単位はbps(Bit Per Second)である。
音声データのビットレートは、「サンプリングレート×ビット深度」で決まり、映像データのビットレートは、「フレームサイズ(画素数)×フレームレート」により決まる。
サンプリングレート
1秒間にどれくらい(何回)音を分割して録音するかであり、単位はHzである。
ビット深度
サンプリングレートの1回(1つの間隔当り)にどれだけのデータ(何bit)を録音するか。
ちょっとしたヒント
個別に撮影・録音する際の注意
たいていの動画編集ソフトで、殆どの映像、音声、画像データ形式が読み込めるので、各自が撮影・録画を行う機材やデータ保存形式を気にする必要は殆ど無いと言える。むしろ、撮影・録音時のデータを”加工しないで”編集担当者へ渡す方が良い。音声データを別撮りしているケースでも、映像データ側と同時録音されている音声データは”消さないで”おこう。編集時のタイミング合わせに使える上、編集ソフト上で消音はいつでも容易にできる。
動画データの品質(編集後動画の見映え、聴き映え)を高めるためには、撮影機材スペックや撮影環境(明るさや雑音など)を可能な範囲で考慮すると良い。後工程の編集作業の効率にも良い影響が見込まれる。
共同作業(人数多め)ならではの考慮点
今回のリモートセッションは12名のメンバー、最終的に57の素材データ(メンバーそれぞれが撮影したり、録音したもの)が集まった。
データの共有にはクラウド環境(Googleドライブ)を活用、完成イメージの確認や進捗状況共有はSNS(Messengerグループ)で適宜行った。
これらに関して、リモート作業であることは特に問題にはならいが、動画編集の元となるデータファイル数が多い場合は、IDを振るなどしてユニークなファイル名にすることや版管理をする工夫はした方が良い。
Macユーザー、Windowsユーザーが混在する共同作業では、"mov形式"の動画ファイル(QuickTime用、MacやiPhoneなどのiOS利用者にとっては一般的な形式)は、Windows環境でデコーダーを入れておかないと視聴出来ないの出来ないので、考慮が必要だ。
編集ソフトで出来ることの把握
今回は、音声編集にAudacity、動画編集にAdobe Premiere Pro、その他、勉強・確認作業では、FilmoraやDaVinci Resolveも利用した。無料の動画編集ソフトでもかなりのことができる。
インターネット上には、動画編集(音声・映像・画像含む)の情報があふれている。動画編集の初心者の場合は、そもそも何のためにやる作業なのか、編集ソフトの機能で何ができるのか、ということを正確に理解していないため、検索キーワードすらわからず、ここで時間を取られてしまう。
また、説明動画はある特定の編集ソフトを前提にしているケースもあるので注意が必要である
お薦めは、まず最初に簡単な動画作成の一連の作業をやってみることだろうか。素材データを動画編集ソフトに取り込み、簡単な編集作業を実施して、エンコード(ファイルへ書出しをする)という動画データの圧縮作業までを行ってみると良い。
エンコードはデータ量やパソコンのスペックに依存するが、かなり時間のかかるものであることも知っておくと安心である。また、編集中の確認視聴のパフォーマンスが出ないことも作業効率を下げることになるので、キャッシュ設定など使用する動画ソフトの設定を調整するワザも確認しておくのも良い。
結局、1年生はどうなったのか?
大事なことを理解した
リモートセッション動画といっても、定義は色々。音楽メインなのか、動画メインなのか、両方なのか、その目的別、仕上がりイメージを確認することが大事である。そして、関係者の期待値確認、情報連携をしよう。
これ、ものづくりなのであたりまえ、といえば、あたりまえのこと。
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やってみることを楽しもう。
編集方法の正解は1つではないのだ。
最後に1年生の作成した動画をご紹介します。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。