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 忘れられない映画なのに、二度観たいとは思わない映画がある。

 きらいなわけじゃない。観てしまうと、巻き戻せない過去にまた切なくなってしまうから。

『ラ・ラ・ランド』、観なきゃよかった。本気でそう思った。いい映画だったし、観て良かったと感じたのに、同時に左右の奥歯で苦虫を潰していた。
 アレはもう遠い花火で、瘡蓋(かさぶた)となっているはずだったのに。

 前にも似た経験をした。『シェルブールの雨傘』。
 「時間て残酷だよね」
 観終えてこぼれた、無防備な魂。

 あれは誰に向けて発したため気だっただろう。

 あの軽快な曲を聴きたくなって、オンデマンドで『ラ・ラ・ランド』を探した。
 観たくなったわけではない。ただ曲を聴きたくなっただけだ。
 手繰り寄せ、タイトル画面が現れると、それは怖いもの見たさの扉に見えた。
 扉は霊峰のように冷たく重い。取手に手を当てると、たちまちのうちにひっつきそうな厳しさがあった。

 それでも。

 開けてみた。

 けれども、

 すぐ閉じた。

 瘡蓋を剥がそうとしただけで、痛みが走った。その傷はまだぐずついている。

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