見出し画像

線で繋ぐ。

 線で猫を描く、が昨今のマイブーム。猫のイラスト作品が三桁を超えたあたりから、線猫が増えてきた。

 シンプルで簡単そうに見えるけど、容易ではない。

 一見安易な1本目を引き切るまでに息を呑む。第一投が決まらなければ、続投叶わず、その絵はお蔵入り。神経を研ぎ、清冽な一閃が瞼の裏に現れる瞬間を待って、見えた刹那に一刀を振り下ろす。

 引いた線は息をしているか? 現れいでたる一線の躯体に耳を当て、鼓動を探す。

 ピカソはかつて、チャチャっと書いた線画に高額な値段をつけてみせた。もちろん巨匠とは比べる由もないけれど、気分は大御所、ひとり空回りの悦に入る。

 絵は『塩顔で伸びをする猫』。

画像1

 赤の複数線が赤十字を連想させ、5本線を生かした連作に繋がった。物語は、上記の猫の仔猫時代。発熱に飼い主急ぐ、の図。

画像2

 猫の顔は変わらないのに、状況が変わるとしょっぱかった塩顔が万事休すの顔になる。

 幼くても注射はわかるし、その気持ちにも共感できる。

 いや、幼き自分を重ねた訳ではない。

 1本の線が触手みたいに伸びていき、予想だにしなかった別個体を掴む。このようにして物語が紡がれていく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?