時間に悔いを残さないために。
時間は物体だ。いつだって坂道を下り続けている。
心は抗い、上を向く。
目が捉えるものは、遠ざかる過去だ。
気持ちの触手が伸び、終わってしまったものをつかもうとするけれど、所詮は実体のない空まわりの焦燥、宙を切る無駄足が空虚感を川底に積もらせていく。
時間を操れるアプリが開発されたなら、人はどこに向かうだろう?
使えるのは一度きり。
行って、帰って、おしまい。
どこへ行く?
振り返れば影を残す坂上か。
それとも奈落かもしれないまだ見ぬ坂下か。
迷っている間にも躯体は坂を下っていく。
取り戻せなくなる前に「これでよかったんだ」と思える時間にしよう。
今この時の下り具合に覚悟を決めよう。
通り過ぎてしまう今を、少しでも鮮明に刻んでおくために。
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