パブロフの。
「戸棚を開けるといつだってご飯をくれるんだもの。ね、ね、ご飯ということでしょ、飼い主様? だって戸棚を開けてるよ。ほら右側にずらりと並んでる。その、上から3番目のやつね」
パブロフの犬は犬に限ったことではない。猫だって繰り返し教え込まれればパブロフの犬になる。
「上から3番目のやつをくれるんだったら、お手でもなんでもするよボク」
だけど最近のしたたかペットは、すでにパブロフの犬の上をいっている。
「そうそう、それそれ、ご名答! サンキュ。それじゃご褒美、飼い主様、手を出して。そうそう、その調子。はい、お手してあげる」
ーー内緒だけど、第五代猫将軍様が人類憐れみの令をいきなり発布したものだから、猫社会は今おおわらわ。被災や紛争、戦争で人族はたいへんなんでしょう? ニュースのチラ見でそのことは知ってるんだよ。猫仲間はみんな人類哀れみの令は悪法だってこっそり囁き合ってるけど、甘えてあげればご飯のグレードは上がるし、仕事の邪魔しても追い払われることなく撫で撫でしてくれるようになったし、まんざらでもないんだよね。もっと哀れんであげるから、美味しいところのおかわり、もういっちょう頼みます!ーー
……人も猫の愛くるしいトラップに条件反射ではめられるようになってきた。パブロフの人?