シャッターを押すと、世間の真実を写し出す『世相カメラ』。
聞くところによると、カメラの気まぐれで少し先の未来を切り取ってくれることもあるという。
そんなファンタジーの世界から落ちてきた不思議なカメラを手に入れた。
自然災害、優勝チーム、試験にギャンブル。
応用はききそうだが、私利私欲に走ると泡と消える脆さも合わせ持っているらしい。
だから、使用は控えめに。
あくまでも自分の足場を知ることにとどめておかなければならない。
最初の1枚は何を撮ろうか?
まずは、社会を知りたい。
パチリ。
ニンジンをぶら下げられて馬車馬のように働く労働者たち
一人勝ちとその他大勢という構図
「寄らば大樹の陰」幻想
「親方日の丸」ばかりが安泰
「はたらけど はたらけど猶わが生活楽にならざり
ただ甘い蜜を夢見る日々」
現代生活、石川啄木の頃の苦しさとあんまり変わらないのかも。
フランスに、こんな諺がある。
「ニンジンが煮えた」
意味するところは、どうしようもない、ということ。
まさに現代社会は、どうしようもない状況にある。
あれ?
あぶりだしみたいに写真に何か浮かんできた。
未来の予言?
浮き出たのは、搾取構造の反逆者・世直しねずみ小僧だ。
これは未来の光明か?