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窓外からの届きもの。

 数々の決まり事を守らされながら、窮屈さに辟易しながらも、日々の暮らしが守られている。忍耐と引き換えに安泰を得ている、そんな毎日をふとした拍子に意識した。
 開けるにはちと早すぎる固く乾いた闇の朝に、窓を開けた。窓を取り巻く世界にふれたせいだ。その際に、ふと、そんなことを意識した。

 ビルの向こうのそのまた先の、未だかつて訪ねたことのない街を貫く高層道路や幹線道路。人は眠りにつく前に、あるいは眠りから覚めて、車を走らせているのが、明けた窓から乗り出した身の耳に入り込んできた音でわかった。大小さまざまな車に、色とりどりの個がセットされて、信号で止められない限り、はたまた目的地に辿り着かない限り、車を走らせているのだ。その何百、何千という音が、開けきらない固く乾いた明け切らない朝に、混ざり合って、ひとつにまとまって流れている。音は、街にたちこめた靄だ。混ざり合うことで個を失くす色彩だ。長時間露光で光を交錯させるヘッドライトの幾重かも知れないほどの重ね絵だ。乾いた砂を、終わりのない坂道に流し続けるような音をたてて、明け切らない朝が夜明けに向かって流れていく。
 ここに、破壊はない。たまに、アクシデントに遭うことがあるにせよ、決まり事を守っている限り、概ね平和でいられる。日々の暮らしは守られている。

 海の向こうの休戦が2日間延長された。明けたら再びどかんとやらかすのだろうか。破壊が再開されるのならば、明けない夜があってもいい。混ざり合うことで個を失くすあの車の流れの集合音のように、角をなくして丸くなってしまえばいいのに。

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