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海を渡る者、渡れなかった者。

 芥川賞受賞作を読んだ。2編は違うが、繋がるところもある。文章の妙と設定の妙ほどの違いの中に、

・荒れ狂う海
・死者と対峙
・死者がとどまる場所
・過去の触手
・これから

 これらの飛び石が重なっていた。

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 2作とも芳醇で出来のいい葡萄で作ったいいワインのような作品だった。遠まわりして忘れ物扱いに捨て置く期間もなかったし、近道で文言を素通りするようなこともなかった。まさに一言一句を追いかけたくなる力量。しっかり読み込ませていただいた。

『貝に続く場所にて』石沢麻依

『彼岸花の咲く島』李琴峰

 読後、味わいのある大人の旅のあとのような余韻が残った。

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