三保の松を脅かす「センチュウ」との格闘の話。
文化遺産・三保松原。
その名の通り、半島じゅうにずらりと林立している松ですが、実は近年、ある「虫」に悩まされているそうな。
三保松原に2019年3月にできた、新しいランドマーク「みほしるべ」(正式名称「静岡市三保松原文化創造センター」)の2階の松に関する展示エリアを一手に担ったリケジョ公務員・山田さんに聞いてみました。
なんの虫?
その名も「マツノザイセンチュウ」。
聞き慣れない・・・ですがこの「センチュウ」が松の中に入ることで「マツ材線虫病」にかかり、松が枯れてまうそうです。
--山田さんの解説--
マツ材線虫病は、一般的に「松くい虫」と呼ばれることもありますが、「松くい虫」という虫は存在しません。
この病気、マツの材にマツノザイセンチュウが入ることで、根から葉への水の流れが止まりマツが枯れる病気です。決して「マツが食い荒らされて枯れる」わけではないんです。
ちなみに虫の名前は「マツノザイセンチュウ」。病気の名前は「マツ材線虫病」。病気の名前には「ノ」が入らないので要注意です!
「センチュウ」を漢字で書くと「線虫」。
糸のように細いニョロっとした小さな虫なのですが、どうやって松の中に侵入するのかというといつもセットで出てくる「運び屋」がいるそうで。
--山田さんの解説--
「マツノマダラカミキリ」という虫が、健康なマツにマツノザイセンチュウを運んでくるんです。マツノザイセンチュウが樹体内で繁殖し、マツを病気にします。
そして、こうして枯れたマツの木にマツノマダラカミキリが卵を産み、幼虫がマツの樹の中の栄養を餌にして育ちます。羽化したカミキリがセンチュウを体内に入れて、また次の健康なマツへと運ぶというサイクルです。
マツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリは、共生関係にあるんですね。
(静岡市HP「松くい虫防除事業」より)
たしかに、この循環が続くと三保半島じゅうの松が枯れてしまって、三保松原の景観が崩れてしまう‥‥!!!
松を病気から守るには?
静岡市のみなさん、あの手この手で、いろんな対策を講じているそうで。
主には3つの事業を実施しています。
(1)枯れてしまった木、付近に散乱している枯損枝をすべて除去し、その後も年間を通じて被害にあった松をその都度伐倒する「伐倒駆除」。
(2)マツの中に潜むマツノマダラカミキリの幼虫を駆除する「予防剤樹幹注入」
(3)羽化して成虫したカミキリを殺虫する「薬剤散布」
職員さんたちが、日々枯れた松がないかの点検なども行っているそうです。
(薬剤散布の様子)
そのかいあって、徐々に伐倒しないといけないマツの本数は減っているようですね!
ただ、一番知ってほしいのは…
と、山田さんが力を込めて言うのは、「人の手が必要なんです」ということ。専門家や薬剤の業者さんでなくてもできることが、「松葉掻き」つまり、マツの木から落ちた松葉をこまめに取り除いてあげることだそう。
三保松原では、地域のみなさんが様々なグループを作って松の景観を守る取り組みをしているそうです。
この世界遺産の景観は、地域に守られて続いているんですね。
三保の朝日を浴びながらの「松葉掻き」、結構おもしろそうです!