海辺に実る幻の果実から春を感じる『湘南ゴールド』
春らしからぬ
春先、私たちには多くの前向きな行事があるはずだった。
目黒川の下で川面に漂う花弁に焦点を合わせながらこの1年について考える花見、洗練された洋服を身に纏い観光地に足を運ぶゴールデンウィーク。
2020年、それら全ての機会が閉ざされた。
こんな時、前向きな気持ちになれるような、水面から滴が弾けるような気持ちのいい何かに頼りたいと考えてしまうのは私だけだろうか?
そんな私や、同じ思いの貴方が飲む時機であろうビールを作っている会社がある。
それが神奈川県厚木市に在所のサンクトガーレン有限会社だ。これまでに実に15種類ものビールを作ってきている。
それもそのはずで、日本のクラフトビールの元祖とまで言われているのがこのブルワリーなのである。彼らはエールビールの製造に重きを置いており、創業時からエールビール一筋でビール製造を続けている。
今回紹介するビールには、そんなサンクトガーレンの醸造担当者の舌を唸らせた希少な果実が使用されている。それが「湘南ゴールド」というみかんである。
海辺に実る幻の果実 湘南ゴールド
湘南ゴールドは、神奈川県南部の海沿いになっていたみかんから着想を得て開発された果実である。開発に12年の歳月を費やされており、ずっしりと歴史の重みあるみかんだ。
見た目はまるでレモンのようにイエローだが、甘みを示す値となる糖度が12%を示し、ちょうど良く甘い。何より、醸造担当者の鼻に止まったのはその香りである。体に纏いたくなるほどの匂いで、香水のような香りだと言われることも少なくない。
神奈川県の特産品として指定されていることもあり、県外ではいまだに入手困難なこの湘南ゴールドというみかんを、果汁から皮から何まで使用して製造されたのが今回注目の湘南ゴールドである。
季節限定フルーツビール 湘南ゴールド
サンクトガーレンの湘南ゴールドは、先ほど紹介した強烈に心地いい香りを放つ幻の果実を、果汁から皮から実から全てを丸ごとふんだんに使用している。
インターナショナル・ビアカップ(国際ビール大賞)にて10年連続の受賞歴があり、輝かしい実績のあるフルーツビールである。「アメリカンホップは華やかな香りがする」というイメージを創りあげたカスケードホップが精巧にあわせ用いられているため、直にみかんを感じる香りに仕上げられている。
栓抜きで蓋を外してグラスに注げば、そこに広がったのはみかんそのものであり、この晴れやかな空の下にいるような気持ちには久しく会えていない。
しかし、一度飲んでみると一変、そこには大人の世界があった。一般的にフルーツビールといえば、あまり苦味を舌の上で感じることなくスムーズに飲めてしまう印象だが、このビールは少々入り組んだ苦味を持っている。カレールーと白米をぐちゃぐちゃに混ぜて食べるのではなく、しっかりと両者を分け、二つの味を舌の上で感じながら咀嚼することと似た感覚がある。
まさに果実を一粒一粒口で咀嚼しているようかのように香りが鼻腔を刺し、湘南ゴールドという幻の蜜柑の存在を強く感じられる。終わりから始まりまでみかんがそこにあるような、そんなビールなのである。
春くらい前向きに
2020年春季、世界の空気が沈んでいることを感じ取っている人は多いのではないだろうか?
著名人の訃報、度重なるイベントの中止、外出自粛要請。
そんな池の底に落ちてしまいそうな時にでも、湘南の海辺で吹き荒れる風のような勢いを、湘南ゴールドは身体に吹き込んでくれる。
それはまるで、気持ちの良い春に、新しい一歩を踏み出そうとしている人を後押ししてくれているようにさえ思える。
1996年からビール作りを続けているサンクトガーレンが醸造した湘南ゴールド。淀んだ雰囲気の中、弾ける果汁を五感で感じてみてはいかがだろうか?
文 : サピエん太郎
今回紹介したサンクトガーレンさんは、SNSでも発信しているのでチェック必須です!↓
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