ラストシーンが素晴らしい映画三選

映画は映画館で全体を観てこそ、というのはもちろんの話だが、そのうえで、ラストの終わり方がとりわけ心に残って離れない映画を3本厳選してみた。なお、筆者はここに挙げる3本はすべて劇場で観たことを、その思い出とともに記しておく。

①ジャ・ジャンクー『山河ノスタルジア』
このラストシーンは冒頭と呼応している。ペット・ショップ・ボーイズの「Go West」という曲がかかるからだ。だが始まりと終わりではそれが持つ意味はまったく異なる。

②黒沢清『旅のおわり、世界のはじまり』
映画中盤過ぎの、劇場で突然歌い出すシーンに始まり、ラストの山中での歌、からの顔のアップ。飲みの席でこのラストシーンをひどく貶したさる批評家がいたが、私はこれぞ黒沢だと思う。黒沢の中のカラックス的部分が最も出た瞬間というか。のちに二人が対談することも、私にとっては納得のいく成り行きであった。

③北野武『あの夏、いちばん静かな海。』
観たことがある方に問いたい。このラスト数分、なかなか奇妙じゃないですか? そしてちょっと怖くありませんか? 音楽とともに、いきなり映画の総集編のようなものが始まり、それはちょっとゴダール『軽蔑』を思わせもする。また人物たちがこっちを向いてはにかむのは、小津の『麦秋』を思わせもする。いずれにせよ何度も見返したくなるシーンだ。

3本挙げたあとに、これらすべてのラストシーンが「音楽」と密接な関わりを持つことを思い起こしておきたい。劇場で観ていないため挙げなかったが、北野の『キッズ・リターン』なども、エンドクレジットにかかる抜群のタイミングで流れる音楽が忘れがたい。昨日の記事でも最後に書いたが、映画は音楽に嫉妬しつづけるのだろうか、という問いをいまだに持ったままでいる。ともあれ未見の方はぜひDVDなどで、もちろん最初から全編観たうえでラストシーンを楽しまれたい。

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