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みやもっさん

その昔
僕が小学生だった頃の話

隣の席の宮本さん、
いや
みやもっさんは
僕に宿題の答えをみせて
それから
ドリフの鼻歌を歌っている

いつのまにか
いや
ちゃうな
鼻歌が2番に入る頃
僕は
みやもっさんを好きになっていた

いや

そうやない

おじいちゃんの部屋にある
裸の女の人しか写ってないカレンダーや

恥ずいけど

5月の女の人が
みやもっさんに少し似ていたから

かもしれんし

こっそり持ってきた、匂い玉が鼻に詰まり      
みやもっさんが保健室に連れて行ってくれたその時

かもしれん

とにかく僕は
みやもっさんを好きになっていた

とにかくや


夏休みの読書感想文で「ナイチンゲール」が
みやもっさんに思え、感想文にみやもっさんの事を書いてしまいそうで
何を思ったのかその時は
(耳と鼻の穴はほじったことがあるが、お尻はない、特に鼻をほじるのが好きだ)
みたいな事をナイチンゲールの読書感想文に書いたのを今でも覚えている

みやもっさんが僕の事をどう思っていたのかはわからない
わからない事が今
もう一つ
みやもっさんは黒板の前に先生と並び
僕たちを見て
退屈そうに
「転校しますぅ」と言った

隣の席に戻ってきたみやもっさんは
急に僕の耳元で
「磯野カツオってお餅11個も食べるんやて」と言って少し笑った
僕は何も聞けなかった
いや
ちゃうな
何を聞けばいいのかわからんかった
だから僕も
少し笑った

うん
そうや

その日の放課後
教室で一人
みやもっさんに手紙を書こうと
書きたいと悩んでいた
ランドセルの中を探すと
三十五点の算数のテスト用紙があった
その裏に
色々書いたり消したり
迷って一言

サヨウナラ

と書いた
うん
もっとなんか
書きたかったけど
まあ
ええよ
うん
男っぽくって
うん




オカンにもらった便箋に
やっぱり
やっぱり
みやもっさんを好きなんやって事を
書いた
余ってる折り紙でシュリケンもつくった
何個も
何個も
明日便箋と一緒に渡そう
喜んでくれるやろか
向こうの学校の友達に渡せばいい
きっと喜んでくれるやろう
その夜は
眠れんかった
みやもっさんも眠れない日があるんやろか


次の日


教室に入ると
いつのまに取りに来たんやろ
みやもっさんの荷物はもうあらへん
空っぽの机の上には
三十五点の
サヨウナラだけが残っていた

ポケットの中のシュリケンが太ももにあたって
チクチクと
痛かった